| 詰る所、人生とは絶望を乗り切るための道程である |
| 投稿者:JR(名取) 投稿数:96 |
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ジャンル:幻想
点数:17 点
王都の一画に広がる南サンドリア地区。Watchdog Alley(猟犬横丁)と呼ばれる閑静で長くない通り。ここに彼らの住居はあった。 簡素な石造り。サンドリアでは珍しくも無い、普遍的な建築物である。 今回は、ここの住人達を中心としたエピソードを、紹介させて頂く事にしよう。王都(ここいら)の人間は、住人達(彼ら)を確かこう呼んでいる。『It is a hero who loses late as』(名も亡き英雄)と――――。
1. 阿吽の呼吸-part1 種族はエルヴァーン族。性別は男。漆黒の短髪に、夜を連想させる暗色の双眸。表情は無く、机上の書類に目を通している。 その内容は仕事の依頼だ。近所の奥さんの悩み事から“お国”の事情まで。彼らの肩書きは便利屋。料金さえ支払えば、如何なる内容の仕事であろうと遂行する、一流(プロフェッショナル)である。 その緊急度を吟味して仕事を選別するのも、リーダーである、このTという男の大事な日課(職務)である。 幾枚目であったか。こんな謳い文句が彼の目に飛び込んできた。 『Fight rally of Vana'diel(ヴァナ・ディール 闘技大会)』 書体は筆記体。色彩は赤。でかでかと、二つ折りで。その下には、日時、場所、賞金等が詳記されている。 明らかに異類なこの書面にも、眉一つ動かさずに目を配るT。早々に読み終えると、捲りながら口を開いた。やはり変調せずに。 「出ま――」 「また来るわ」 彼の言葉を遮ったのは、女性の声であった。いつから居たのであろうか。その声の主は、既に振り返り、歩み始めている。 その正体はやはり女性であった。種族はTと同族。煌然と背面をせせらぐ白銀の長髪。透徹な銀色の双眸に、薄く笑む真赤なルージュでなぞられた唇。それに窈深な谷間。俗的だが、艶美である。しかし、上品。誤解しないで頂きたいのだが、決して擁護というわけではない。 彼女の名はV。Tが“ごひいき”にしている情報屋である。その網は広大だ。近所の奥さんの悩み事から“お国”の事情まで。 失礼、話が逸れてしまった。一方のTに変化は無い。日課(職務)の最中である。遂行する仕事の選別は、まだ終わっていない。ただ、Fight rally of Vana'dielの出場が、選考外行きとなっただけである。
2. 阿吽の呼吸-part2 再び場面は、彼――Tの職務の風景。書類の束からちらりと視線を外す。 「はい、只今」 その、頼み事とは似ても似つかない所作へ、ヒューム族の女性が逸早く反応した。席を立った彼女は、ドアの外へと行方を進める。 Tの事務補佐も行う彼女の名はC。非常に印象的な双眸をしている。深海よりも深奥。それでいて蒼穹よりも明澄。一定の時間、じっと見詰められているだけで、性別を問わずに魅了されてしまいそうな。艶美――表現上であれば、上記の女性とよく似ている。が、その見目にそぐわず、声色は蕩散(とうさん)としていて甘美だ。因みに本職はスナイパー。 「どうぞ」 戻ってきた彼女が、Tへカップを差し出した。湯気と共に香りが立ち、味覚と嗅覚を擽る。「ありがとう」とT。カップを手に取る。Cは一礼すると、再びドアへ行方を進めた。その最中で彼女は思考する。 自慢ではないけれど――。かなり彼とは通じ合っていると思う。心魂が知覚するのだ。彼と視線が合った瞬間に、閃光のように彼の思考が心内を駆け抜ける。 ――試してみようか。 再び場面は、彼の職務の風景。書類の束からちらりと視線を外す。 その先にはCの双眸。例の、見詰められているだけで魅了されてしまう、魔性の瞳である。これがギャグ漫画であったのならば、彼女の周囲は、きらきらと華麗なトーンで装飾される事だろう。媚態を使わない彼女の、一世一代のアピールである。 彼女と視線が合致してから二呼吸。Tが口を開く。 「どうしたのかね、C君。紅茶なら要らないが?」 残念。上記は彼女の思い上がりであったようだ。先程まで煌いていたオーラは一転。彼女が乗り切らなければならない道程は、険難であるようだ。
3. 阿吽の呼吸part-3 くどいようであるが、場面は彼――Tの職務の風景。その様を見詰める人影が一つ。が、Cではない。ヒューム族の女性。が、Cではない。彼女は任務の最中である。周囲にはきらきらと華麗なトーン。が、Cではない。彼女は――失礼、以下割愛。 双眸は、蒼穹ではなく黄金。毛髪は、ブロンドの長髪。後ろ髪を団子のように結い合わせ、更に余った毛髪が、肩程まで垂れている。名はI。Tの部下である。 上記の通り、周囲には華麗なトーンが漂っている。心情は、心魂(囲い)から漏出し、蕩ける風に睇視する双眸で、壮麗な星空を撒き散らしている。無造作に開いた口元から言葉は出ない。まるで名画を鑑賞する風に、ただ見詰めるばかりだ。恍然。が、Cのように恥じらいは混色しない。漏出した心情に心身ともに委ね、その大海原へどっぷりと耽溺している。 デスクを挟んだ位置で頬杖を付く、King Behemoth――否、Shadow Lord――否、Promathiaをも凌駕する、独自のフィールドを展開する女傑――I。そんな怪物を前にしながら、Tは平然と職務をこなしている。 呼吸一つ、二つ、三つ、四つ、五つ――そして、十を数える頃。口を開いたのはTであった。だが、視線も意識も、その行方は手にする書類の束だ。 「履きませんよ」 失礼、(サブリガだなんて)という言葉が抜けていた。 が、彼女に変調は窺えない。関係ないのだ、そのような事。彼女にとって、必要なのは被写体である。後は、SQUA○E EN○Xの3D映像や、草○剛が宣伝する○デジをも凌駕する自身の脳内空間で、思惑通りの画像が鮮明に映写されるのだから。
4. 阿吽の呼吸part-4 もう冒頭は言うまでもあるまい。また、彼の元を訪れた人物があったようだ。 その正体はタルタル族。栗色のくりくり坊主で、双眸は黒。名をBといい、彼もまたTの部下である。 例によって、職務の最中であるT。そんな彼を前にして、Bの表情は困惑している。何か言いたげに口元をぱくぱくとさせているが、衝くのは「えーと」だの「あのー」だのといった取り留めも無い言葉ばかりで、具体的な言葉(もの)は何一つ出てこない。 そんな様子が幾程続いたであろうか。沈黙していたTが口を開いた。やはり視線も意識も、向いているのは手にする書類の束だ。 「B君。無理はしないでいい」 失礼、(何も思いつかないのであれば)という言葉が抜けていた。 がーん。これがギャグ漫画であったのならば、こんな言葉が、Bの頭上に激突している事であろう。口をあんぐりとさせて、佇立する。 一方のTは、悪びれた様子も見せずに職務を続けていた。尤もである。彼に悪意は無い。思考を当然のように言い放ったまでなのだから。T。住民達のボスであり、その言葉(刃)は、短いが鋭い。
5. 心、惑わされてpart-1 「さあ、こちらを御覧なさい。逸らさずに、じいっと私の瞳を見詰めるのです」 女性がそう告げた。艶を絡めた嬌声。まるで、言い聞かせるように、ゆったりと、十分な間を取って。 その正体は、バイソン装束を纏うミスラ族。双眸は、まるでムーンストンのようだ。生気たるものを知覚出来ないが、その本性は魔性。人の心を誘い、惑わす。 「ああ……」 その魔性に中てられたのはV。心魂に穴が開く。最中に飼っていた心情が、どろどろと彼女の体内を這う。瞳は蕩け、表情が抜け落ちる。すっかり術中に堕ちたようだ。ミスラ族は、そんな彼女を満足そうに見詰めながら、ゆっくりと一歩を踏み出した。 「ふふ、いい子ね。あなたは小鳥。私は鳥籠。さあ、入っておいで」 声色に変化は無い。そのままVの背面に回りこんだミスラ族は、彼女を抱き込んだ。まるで広げた翼で包み込むように。――が、刹那である。 「あう」 へなへなとその場に座り込むミスラ族。これがギャグ漫画であったのならば、彼女はデフォルト画になり、双眸はぐるぐると渦を巻くのであろう。頭上を、音を立てながら回る、ひよことお星様の付録付きで。 中てられたのは、どうやらミスラ族の方であったようだ。彼女が招き入れようとしたのは、小鳥ではなくHippogryph。Vが内包する煩悩で自滅して、顔を真赤に上気させている。 一方のVは、鳥籠が壊れてしまったにも関わらず、ご機嫌の模様。ご主人様の命令を待望していた。
6. 心、惑わされてpart-2 「さあ、こちらを御覧なさい。逸らさずに、じいっと私の瞳を見詰めるのです」 女性がそう告げた。艶を絡めた嬌声。まるで、言い聞かせるように、ゆったりと、十分な間を取って。 再び場面は、ミスラ族が術を施すシーンから始まる。魔性の双眸が、相手の心を誘い、惑わす。 「ああ……」 次に魔性に中てられたのはC。心魂に穴が開く。最中に飼っていた心情が、どろどろと彼女の体内を這う。瞳は蕩け、表情が抜け落ちる。すっかり術中に堕ちたようだ。ミスラ族は、そんな彼女を満足そうに見詰めながら、ゆっくりと一歩を踏み出した。 「ふふ、いい子ね。あなたは小鳥。私は鳥籠。さあ、入っておいで」 声色に変化は無い。そのままCの背面に回りこんだミスラ族は、彼女を抱き込んだ。まるで広げた翼で包み込むように。Cの口元から、情感に濡れた太息が漏れる。魔性が彼女の心魂に迫る。偽りの自分を脱ぎ捨てるのだと。本来の姿に戻るのだと。 「Tさん! 好きです!!」 蹶然としながら叫号を挙げたC。その一言に尽きるのであろう。背面のミスラ族が初心(うぶ)な娘(こ)と思考するのも頷ける話だ。
7. 心、惑わされてpart-3 「さあ、こちらを御覧なさい。逸らさずに、じいっと私の瞳を見詰めるのです」 女性がそう告げた。艶を絡めた嬌声。まるで、言い聞かせるように、ゆったりと、十分な間を取って。 三度(みたび)場面は、ミスラ族が術を施すシーンから始まる。魔性の双眸が、相手の心を誘い、惑わす。 「ああ……」 次に魔性へ中てられたのはI。心魂に穴が開く。最中に飼っていた心情が、どろどろと彼女の体内を這う。瞳は蕩け、表情が抜け落ちる。すっかり術中に堕ちたようだ。ミスラ族は、そんな彼女を満足そうに見詰めながら、ゆっくりと一歩を踏み出した。 「ふふ、いい子ね。あなたは小鳥。私は鳥籠。さあ、入っておいで」 声色に変化は無い。そのままIの背面に回りこんだミスラ族は、彼女を抱き込んだ。まるで広げた翼で包み込むように。Iの口元から、情感に濡れた呻き声が漏れる。――と、ミスラ族は、表情をぞっとさせながらIを手放した。 彼女の思考に入り込んできたのは、ブロンズサブリガ、そしてその他一式を着用して恥らう自身の姿。眼前の女が、このようなものを妄想しながら恍惚している。そう考えると、羞恥心で火を噴く思いである。 再び自滅。頬を赤らめたミスラ族は、Iの体躯を、引き剥がす風に勢い良く自身の方向へ向ける。心情に輝く彼女の瞳を見詰めて眠るように暗示を掛ける。が、敢え無くレジスト。効果は発動せず。 その後、術者が泣きながら相手を説得するという奇妙な構図が、数時間の間続く事となった。これは余談であるが、ミスラ族が、漸く眠りについたIへ、自身の存在を完全に忘却させた事は言うまでも無い。
8. 心、惑わされてpart-4 「さあ、こちらを御覧なさい。逸らさずに、じいっと私の瞳を見詰めるのです」 女性がそう告げた。艶を絡めた嬌声。まるで、言い聞かせるように、ゆったりと、十分な間を取って。 くどいようであるが、場面は、ミスラ族が術を施すシーンから始まる。魔性の双眸が、相手の心を誘い、惑わす。 「ああ……」 次に魔性に中てられたのはT。心魂に穴が開く。最中に飼っていた心情が、どろどろと彼の体内を這う。瞳は蕩け、表情が抜け落ちる。すっかり術中に堕ちたようだ。ミスラ族は、そんな彼を満足そうに見詰めながら、ゆっくりと一歩を踏み出した。 「ふふ、いい子ね。あなたは小鳥。私は鳥籠。さあ、入っておいで」 声色に変化は無い。そのままTの背面に回りこんだミスラ族は、彼を抱き込んだ。まるで広げた翼で包み込むように。Tの口元から、喘ぎ声が漏れる。魔性が彼の心魂に迫る。偽りの自分を脱ぎ捨てるのだと。本来の姿に戻るのだと。 「静かに一日を送りたい……」 ミスラ族に、返す言葉は見当つかない。彼女は、暫く彼を夢幻の最中に閉じ込めておく事にした。悪意では無く、善意で。
9. 心、惑わされてpart-5 「さあ、こちらを御覧なさい。逸らさずに、じいっと私の瞳を見詰めるのです」 女性がそう告げた。艶を絡めた嬌声。まるで、言い聞かせるように、ゆったりと、十分な間を取って。 もう、場面は言うまでもあるまい。魔性の双眸が、相手の心を誘い、惑わす。 「ああ……」 次に魔性に中てられたのはB。心魂に穴が開く。最中に飼っていた心情が、どろどろと彼の体内を這う。瞳は蕩け、表情が抜け落ちる。すっかり術中に堕ちたようだ。ミスラ族は、そんな彼を満足そうに見詰めながら、ゆっくりと一歩を踏み出した。 「ふふ、いい子ね。あなたは小鳥。私は鳥籠。さあ、入っておいで」 声色に変化は無い。そのままBの背面に回りこんだミスラ族は、彼を抱き込んだ。まるで広げた翼で包み込むように。Bの口元から、情感に震える太息が漏れる。魔性が彼の心魂に迫る。偽りの自分を脱ぎ捨てるのだと。本来の姿に戻るのだと。 「Iさん! 好きです!!」 蹶然としながら叫号を挙げたB。その一言に尽きるのであろう。背面のミスラ族が初心(うぶ)な少年(こ)と思考するのも頷ける話だ。 「僕のサブリガ姿を、Tさんのサブリガ姿だと思って抱き締めて下さーーーーい!!」 蹶然としながら叫号を挙げたB。その一言に尽きるのであろう。背面のミスラ族が哀れな少年(こ)と思考を改めるのも頷ける話だ。
10.アトルガン皇国へ行きましょうpart-1 仕事の依頼も無く、平和なある日の昼下がり。Bの部屋のドアが、勢いよく開口した。 部屋の主でありながら、びくりと肩を震わせるB。ドアへ顔を向ける。Iだ。ひどく憔悴している。未だに表情を強張らせるBを他所に、突然の来訪者は口を開かない。 片息を一つ、二つ、三つ、四つ。漸くIが口を開いた。 「B君。アトルガン皇国へ行きましょう」 「はっ?」 彼の反応は尤もだ。こうしてまた、騒々しい一日が始まる事になった。
11.アトルガン皇国へ行きましょうpart-2 ずかずかとBの部屋に入り込むI。Bの眼前で足を止めると、彼の両肩を、勢いよく緊握した。 「私は、理想の男性をかの国で発見致しました」 それは、彼女に憧憬を抱く彼にとって、衝撃的な発言であった。上司であるTでもないとすれば、一体。 「彼は、サラヒム・センチネルたる傭兵派遣会社の士官学校で、主任教官を務めていらっしゃる方なんです」 気が気でないBを他所に、頬を赤らめて、もじもじとしながら話を始めるI。彼女の話は続く。 「厳つい顔立ち、高圧的な態度、右手に持つ木刀――ああ、どれも私をheartbreakさせるのですが」 言い終えると、Bを解放する。いよいよ心ここにあらず。既に思い人の元へ素っ飛んでしまっているようだ。睇視した双眸を右方へ泳がしながら、再び開口した。 「肌蹴たマッチョな上半身が、もぅ――」 『Iさああーーん』 がびーん。これが、最も彼の心情を表現するのに適切な言葉であろう。 心内で、壮絶な絶叫を挙げたB。Iの体躯を揺さぶりながら、悲鳴のような叫号を挙げる。このままでは、憧れの女性が、皇国の鬼軍曹へひいひい言わされる事になってしまう。この任務、失敗は許されない。 「ア、Iさん、御気を確かに!! IさんにはTさんという素敵な御仁がぁ――」 「ああ、Tさんが彼の元で鍛錬すれば、あのような逞しい男になって――」 『Iさあああーーーん』 再度絶叫。既にA○フィールドを展開中。ロンギヌ○の槍でなければ貫けない。がくりと膝を折るB。「分かりました」と消え入りそうな声音で零した。 「行きましょう、アトルガン皇国」 「本当ですか! B君!!」 まるで少女のように飛び跳ねるI。かくなる上は、自身が敵地に赴き、髭面にマッチョな上半身を手に入れる。そして、このウジ虫がと罵声を浴びせる以外に、彼女の目を醒ます方法は無い。彼の任務は始まったばかりである。
12.アトルガン皇国へ行きましょうpart-3 「それに、まだまだ魅力が沢山詰まっているのです!」 「ま、まだ……?!」 双眸を輝かせるI。Bの方は、愕然としながら彼女顔を向ける。ぐぬう。さすが皇国。Bの心内に憎悪の炎が灯る。 「何でも、皇国の面々には特有のモーションがあるらしいのです。サヒラム・センチネルの強欲猫社長の両手で机を叩くモーション。それに、同社の某士官候補生の土下座モーションといった――。そこで、私も『アトルガンの秘宝』のシナリオ・ライターに頼んで、T様特有のモーションを作って頂く事に決めたのです」 雄弁を振るうIに、Bが質問する。 「特有のモーション……。一体、どんなやつですか?」 「ロンジェルツ様仕様」 『モーションじゃねええ』 気絶寸前。どうやら件の軍曹の洗脳は、相当深化しているようだ。Bにとって、心内で泣哭をあげるのがやっとであった。
13.アトルガン皇国へ行きましょうpart-4 「更にもう一人、お会いしたい人がいるのです」 「?!」 最早、限界である。Bは顔を勢いよくと上げるが、精神的な疲労で老け込んでいる。 「水蛇将ミリ・アリアポー様です」 ツンデレ猫将軍だと!! ずがーん。これがギャグ漫画であったのならば、彼の背景へ稲光が差している事であろう。最早、髭面にマッチョな上半身を手に入れ、へたへたとその場に座り込みながら、このウジ虫がと罵声を浴びせた後に、『まさか、ボ、ボク、壺人にされちゃうのかな……』と竦然とするしかないのか!! 思考のブラックホール。決して抜けられない迷宮に、彼は迷い込んでしまったようである。そんな最中、Iの話は続く。 「そしてCをミリ様の元に置いてもらい、ツンデレ合宿を敢行致します」 「ツ、ツンデレ合宿……?」 蚊の鳴くような声でB。Iは「そうです」と大きく頷く。 「まず、普段は私達に対して突っ撥ねるような態度を取る」 (既に相当突っ撥ねられているような気もするけれど……) 「そして任務終了時には、へなへなとその場に座り込みながら、息も切れ切れに仲間を労う」 (ス、スナイパーのCさんが一番困憊している?!) 「そして――」 びくりと肩を震わせるB。眼前のヒューム族の双眸へ、冷徹さが宿ったからだ。 「任務中に相手の捕虜になったら、狼狽しながら、私とTさんに縋り付くのです」 (そ、それが目的か……) 「最終的に一人称をボクと言えるようになるまで、死者の軍団の牢獄で、ワンツーマンレッスンです」 「Iさん、その合宿終わらないと思います。ミイラ取りがミイラです。僕らも一緒に牢獄行きですよ、それ」 再度フィールドを展開させるIへ、Bが進言する。が、彼は気付いていない。彼女にとって、そちらの方が好都合なのだ。なにせ、ツンデレ将軍と長期に渡って共同生活が出来る、絶好の機会であるのだから。
一方、そのやり取りを遠目から眺める二つの人影があった。 「Tさん、発砲の許可を」 CとTだ。呆れ顔で進言するC。Tは何も答えずに、彼女の肩へ、ぽんと手を置いた。
14.無茶振りpart-1 仕事の依頼も無く、平和なある日の昼下がり。Bの部屋のドアが、勢いよく開口した。 部屋の主でありながら、びくりと肩を震わせるB。ドアへ顔を向ける。Iだ。ひどく憔悴している。未だに表情を強張らせるBを他所に、突然の来訪者は口を開かない。 片息を一つ、二つ、三つ、四つ。漸くIが口を開いた。 「B君。欠伸をしてみて下さい」 「はっ?」 彼の反応は尤もだ。こうしてまた、騒々しい一日が始まる事になった。
15.無茶振りpart-2 「いいから、欠伸をしてみて下さい」 双眸一杯を期待で輝かせるI。Bは困惑しながらも、「わかりました」と答える。 「ふわあ」 無風。先程までの彼女の瞳(表情)が嘘のようだ。波が引く風に、彼女の双眸から輝きが失せる。 「そんなんじゃあ、たったの一体も光のエレを呼び出せやしませんよ」 「ア、Iさあん」 やや苛立ち気味にI。足早に退出してしまう。Bの方は理解不能だ。慌てて、彼女の背を泣き声で追いかけた。
16.無茶振りpart-3 「それじゃあ、語尾へ『に』とつけて、エロヒームエッサイムと唱えてみて下さい」 後日。再び瞳を輝かせてIが訪れる。Bは失地回復のチャンス。表情を緊束して「はい!」と頷く。最早、彼女がどういった経緯で発言しているのかという事は、重要ではない。 「エロヒイィィムゥ、エッサァァアイィムにぃぃぃぃ!!!」 水木一○も顔負けの絶叫。当然ではあるが、何も起こらない。未だに緊張した表情で固まるB。――と。 「そんなんじゃあ、イフリートもどきは出て来やしませんよ」 「えっ?! ア、Iさあああん」 やはり苛立ち気味に。足早に退出してしまう。デジャブである。 彼は知らない。彼女が、エルリ○ク兄弟が開いたものとは、別のものを開門した事を。そして、その世界では、光のエレ三体を連れ回す、連邦の白い悪魔と、魔界の怪物を使役する、魔界幻士が存在する事を。
17.無茶振りextra Cが、手持ちの仕事を一段落終えて、一息つこうかと歩いている時であった。 「――――、――――」 奇声に足を止める。彼女は、生来より感覚が優れている。注意して、耳を澄ましてみた。 動物の唸り声のような。低調で、間延びする声。警戒しながら、ゆっくりと声のする方向へ足を進める。一つ、また一つ。ついに発信源と思しき場所で足を止めて、彼女は愕然とした。そこはBの部屋であったのだ。 気付かれないようにノブを回し、ゆっくりと開く。猫の額程開くと、彼女は中の様子を窺った。そこで再び彼女は愕然とする。 奇声の主はB。一人きりで、ずっと件の声を挙げていたのだ。 「何やっているの? あなた」 警戒を解き、呆れ顔でCが入室する。Bが声を止めて振り返る。くどいようだが、三度愕然。くしゃくしゃに顔を潰して泣いているではないか。 「あ、欠伸だけで、ひ、光のエレ、三体を呼び出す、練習を――」 「はあ?」 訥々と質問に答えるB。律儀な男である。憧憬である女性の期待に応えるために、無謀な練習を繰り返していたのだ。が、その経緯をCは知らない。行き場のない膨大な疑念を、抱え込む事になったのであった。
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| 投稿日時:2008-01-01 03:54:37 |
| [004] 感想記事の投稿有難う御座いました。 |
| 投稿者:JR(名取) 投稿数:96 |
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初めてノスタイルでとても不安だったのですが、お二人に高い点数で評価して頂けて、とても嬉しいです。誠に有難う御座います。 レスが遅れてしまったため、お二人へのレスを同時に失礼致します。
>Banditさん 「履きませんよ」のフレーズを気に入って頂いたようで、有難う御座います。 今回のスタイルでは短くという前提も勿論なのですが、必要な情報と必要でない情報の区別や、テンポよく読者の方にイメージして貰える言葉の選別でとても苦労したので、ほめて頂き、光栄です。繰り返しは、まず最初に誰かのネタが思いついて、じゃあ、あいつだったらどうだ、こいつだったらどうだという風に割りとスラスラと思い浮かびました。上手いもので、折角なんで「ほんの小さな〜」のキャラも特別出演させてみるかと考察すると、まるで思い浮かびませんでした;(そんな報告いらねえよ;)アク全開のキャラ万歳。 確かにIはぶっとんでますね^^; 友達にはなりたくないタイプですけど(作者が言うな;) くはあ、申し訳御座いません;; 本編では暫く面々の顔は拝めそうにないです^^; でもまた機会があったら、IとTを主人公に据えた番外編のような短編が書けたらいいな、と思っております――と、いいつつBanditさんの感想記事を読んでから沸々と物語を構成中(早;) ある程度、形が仕上がったらお届けできたらいいなと思います。 ご期待に添えられる作品を創作できるように精進してゆきたいと思います^^
>さそさん 確かにシュールですね^^; 読み返してみたらジャブ何発売ってんだ俺(ストレート打つ力がないだけなんですが;) 彼らはタブナジア編(勝手に命名;)が始る前の正に本編の面々なので、そうかもしれません。上記にも記しましたが、今回のスタイルでは描写や構成の面でとても苦労したので、そのように言って頂けると非常に嬉しいです。 ぐは、ありがたきお言葉。無駄に息が長いので作品量はべらぼうにありますが、これだけはっちゃけているのは正直「名も亡き」だけで、メイン(?)である「ほんの小さな」は、一切笑いがありません^^; なんで読み返して頂く際は、過去ログのJR(ヤブ)で検索なさることを推薦致します。(ちゃっかり宣伝;) しかもこの作品で登場する面々が登場するのはPage2までですので重ねてご注意ください(何の忠告だよ;)
点数:0 点
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| 投稿日時:2008-01-05 02:24:03 |
| [003] 謹賀新年 |
| 投稿者:さそ(下級職人) 投稿数:50 |
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シュール!シュゥゥゥゥゥルッ!こいつぁ春から目が覚めますわーっ!
お恥ずかしく且つ失礼極まることに、この面々には今回初めてお目にかかるのですが、それでも一人一人の持つ空気感や顔立ちまでくっきりイメージ出来るのは何かもう流石と言うか、眼福眼福。
よーしパパ休みが出来次第JRさんの過去作読破しちゃうぞー。 ――――遅いよ私orz
点数:8 点
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| 投稿日時:2008-01-04 00:53:02 |
| [002] あけおめことよろ。 |
| 投稿者:Bandit(目録) 投稿数:137 |
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私の好きなTさんが山盛りで新年早々とても嬉しいです(笑)。 履きませんよ。
4コマっぽい演出がなかなかに新鮮で面白うございました。繰り返しはギャグの基本ですよね。 そしてTさんにロンジェルツ様仕様は私も熱烈に望むところです。 履きませんよ。
と言うかこの面々で、徹頭徹尾最強なのはIさんであることが証明されているような気がします。 その調子で、「ほんの小さな〜」の後にはまたぜひとも本編でお会いしたく存じます(笑)。 ええ勿論Tさんと一緒に。
次作もまた期待しておりますですよー。
点数:9 点
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| 投稿日時:2008-01-03 14:03:08 |
| [001] ある歌手が歌っていました。「マシマロは関係ない。本文とは関係ない」って。 |
| 投稿者:JR(名取) 投稿数:96 |
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新年明けましておめでとう御座います。不束者で御座いますが、今年も宜しくお願いいたします。――と、まったく面白みの欠片も感じさせない挨拶で本年の幕を開けてしまった;(他に思いつくわけでもないのですが) 今回の作品は、「スケッチブック」という4コマ漫画を読んでいたら脳内で沸々と膨らんでゆきまして。当初は「阿吽の呼吸」と「心、惑わされて」だけの予定だったのですが、「ほんの小さな物語」のためにアトルガンとウィンダスの事を某用語辞典で調べておりましたら衝動に駆られてこのような事に――。 上記の通り、感化されたのが4コマ漫画であったためか、今回は4コマ漫画を描くようなつもりで描写してみました。ショートショートだなんておこがましくて言えたものではありませんが、こんなに短編を連続で描写し続けるスタイルは今までやった事が無かったので、凄く不安です。コマ溢れてるは足りないは。終始、4コマでまとめてやろうという意思があるのかも疑わしい; 登場人物は、いじりやすいという観点と真っ先に浮かんできた事から、大変ご無沙汰の彼らを出演させました。完全な自己満足のガス抜き企画です(こら;) 誤字脱字や表現の仕方や文章の構成の仕方等。ご意見、ご指摘、些細なものより重大なものまでどんどん頂けると非常にうれしいです。 次回こそは「ほんの小さな物語」の続きをお届けしたいと思います。 再びではございますが、今年もどうぞ宜しくお願いいたします。最後まで読んでくださった皆様方、誠に有難う御座いました。
点数:0 点
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| 投稿日時:2008-01-01 03:58:23 |