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voice of the... sectFin
投稿者:さそ(下級職人) 投稿数:50
ジャンル:恋愛
点数:30 点
「判らないな」
 風無き渡しに、男声は響く。
 女に背を向けて佇む男と、その背を注視する女。ズヴァール城、王の間へと続く渡り廊の最奥に灯る篝火に、わずかな隔たりを間に置いたそれぞれの影が揺らめいている。
 極北、それもかなりの高度にも係わらず、壁も防風柵も無いその場所でミリィは寒さを感じていなかった。ともすれば首筋を這い登ろうとする、ひどく“人為的”な悪寒を除けば、だが。
 ――かつて、と言って、過去と呼ぶにはあまりにも近い、既に終わった時代のこと。この闇色の王城(おうき)を砦に、一人の魔性が戦いを起こした。今は斃れたその者の憎悪がなおもかつての居城に残留し、気候に影響を与えているのだと言われる。真偽のほどはともかくとして。
 眼前に閉ざされた緋色の扉が、闇の王の憎しみの炉と、二人の人間とを分け隔つ。
「…ぷ」
 自分が立つ場所の謂われにも臆さず、ミリィは吹き出した。嫌みや嘲りを含まないからかい。
「ディアスの『わからない』、ひっさしぶり」
「久し振り?」
「うん」
 王国のラボで。或いはラテーヌの隠れ家で。壁にぶつかった魔導師ディアスの口から幾度と無く聞いたその文句を、つらつらと並べ立ててやる。
「ディアス先生の口癖じゃないですか。判らん。判らない。判るか。わかったにゃー」
「にゃー!?」
「それザフィ」
「混ぜるな。そして言ってない」
 鼻歌まじりに抗議を受け流す。いつもそうしていたように。
(……もうちょっと、すっごい感動とかしそうなものだけど)
 三年ぶりの対面にしてはあまりに平然とし過ぎていると、ミリィは苦笑混じりに自認した。
 心が凪いでいるわけではなかった。なにやら、自分でもうまく説明できない充ち足りた安らぎが胸を包み込んでいて、無理に乱してやることも出来ない。正体不明の、だが決して不快ではない、不可思議な心理。恋人に会うとはこういうものだろうか。
「やはり判らんな。君の物言いは」
「深いからねえ。――ね」
 ぱち。手と手を打ち合わせ。
「何か歌おっか。折角だし」
 いそいそと竪琴を用意する。
「闇の最果て……だっけ。ディアスだって何かやることが有るから、こんなとこに呼び出したんでしょ?応援ソングを作っちゃいますよ」
 吹きっさらしの渡り廊下は屋内と同じ闇色で、足下の微妙なごつごつといい左右に数対突き出した柱のフォルムといいコンサート会場としては少々トゲトゲし過ぎているが、支障は無い。むしろこういった空間だからこそ、新しい詩作にも期待出来るというものだ。
 応じるディアスは、ひどく低かった。
「――王になる」
「王?」
 一瞬、ミリィは意を汲みかねる。
「この緋き扉(ひ)の奥に在る、王の残留思念と力――それと一体化し、私は新たな闇の王となる」
 
「…ぴ…」
 声が、震えた。
「ぴんと来ないなあ。何の例え?」
「言葉通りだ」
「わかんない」
 ミリィは弱々しく首を振る。
 ――が、一方で明快に理解する自分を、無視することは出来なかった。
 闇の王。他ならぬ、憎悪の化身。
 各国に生きる人々の間ではただの噂として既に風化し始めているが、滅び去ったはずの“彼”は五、六年前に一度蘇生した。直後に討ち取られたらしく、ほとんど目撃者すら無かったその事実はザルカバードを訪れた冒険者の間に広く“実感”として認知され、同時にひとつの危機感を彼らの中に植え付けた。
 二度目が無いとは限らない。
 王は、戻る。その存在を許す鍵在らば、緋き扉の封を破ってやがてこの世に戻り来る。
 例えば世界を憎悪する者。
 己が憎しみを慰めるため、身すら命すら礎にするを厭わない者。
「どうして?」
「言葉が必要か?」
 ――復讐。
 その二字が、脳裏を埋ずめた。
「王都でのうのうとしている連中には、間違っても同じことは言えまい。いや、『どうして生きている』という意味で言うかな……そんな余裕を与える気も無いが」
「戦争を?」
「……これは断罪だ」
 唐突に。
 溢れ、零れ落ちる涙を、吟遊詩人は自覚した。あまりに暗き情念の奔流。今のディアスが抱く痛みを、誰が歌に託せるだろう?忌避され、追放され、存在すら否定されたその苦しみを、何人が詩に記せるだろう。断罪。ひとつの言葉に込められたのは、百万の字句を綴ったところで決して語り尽くせぬ想い。
 歌は想いを唱(うた)うもの。詩(うた)は心を紡ぐもの。自分では決して表現し得ぬ情念を叩きつけられたとき、吟遊詩人は声を無くした。自らの言葉の、意味を見失った。
 ――吟遊詩人としての彼女は。
 が。
 目を伏せず、ミリィは男の背中を見詰めた。
 ディアスのその身が茫と瞬き、封印された緋き扉へと開門の魔力を注ぎ込む。素早い明滅に共鳴するように、扉から微細な震動が伝って――
 その時、琴の音が回廊を渡った。
 刹那、ディアスの上体が傾ぐ。
 流れる音色にさらわれて、魔力の発光が消え失せる。
「…!?」
「大丈夫」
 がくと膝を突く傍らへ、奏者――ミリィは歩み寄る。変わらずに在る穏やかさの意味を、急速に、明確に理解しながら。
「大丈夫よ、ディアス」
「何を――」
「そんなことさせない。貴方が私に言った通りに」
 唱うように言う心の内に、ひとつの記憶が去来した。
 三年前、全てが変わる前の夜。
 抱き締められた腕の中、ディアスの言葉を聞いていた。大丈夫だ。問題は無い。
(お前が見ていてくれるのだから――)
 術に失敗し狂気に奔っても、憎悪の引き金を引こうとしても、ミリィが止めてくれるから大丈夫。
 誰にも危険が及ぶことはない。
 それは、この時のための約束。
(そうだね)
 あの時奏でた消散(フィナーレ)の呪歌が、高原の空で貴方を留めた。今度もきちんと後始末する。憎しみも滅びも振り撒かせはしない。
 私は、そのために来たんだ。
「――!!」
「くっ…!」
 無音の咆吼が呪歌を打ち消した。凄まじい魔力の感触に肌が粟立たつのを自覚しながら、後方に跳んで間合いを開く。
 着地の寸前、下肢が硬直した。
「!」
 影縛(バインド)。不自然な形で降り立った足が、魔に縛されて動かない。
 怯まずにフィナーレを奏で続ける。爪弾かれ出る呪力たちが、ディアスが組み上げる雷光にまとわりその完成を妨げた。隙をつきバインドを打ち消して――
(駄目!?)
 一瞬崩れかけた雷が、勢いを取り戻し再び集束し始める。呪歌をものともしていない。足を絡める魔力もまた頑として抵抗を寄せ付けず、破槌の狙いを逸らせまいとする。
「まだまだ――!」
 なおも演奏は止まらない。効果が見られないのにも構わず、成長を終え解き放たれるのを待つ雷光へと呪力の波を送り続ける。約束したから。果たすため、それしか出来ないから。
 光が――
「ディアス」
 迸る。
「ディアス――!」
 叫ぶミリィの眼前で、雷塊が突如形を変え、爆ぜた。

 見知った白銀が揺れた。
 丁度雷が散った地点に拳と片膝を突いたエルヴァーンは、濃紫の作務衣を身に着けていた。
 種族特有の美しい横顔に刻まれるのは、勝ち誇ったような、どこかすっとぼけているような、造作にそぐわない子どもっぽい笑み。
 声を詰まらせるミリィの眼前、ひょいと腰を上げた男は突いていたスパルタンセスタスを撫でつけた。焼け焦げて最早原型を留めず、二度と使い物にならない拳具を。
「セーーーーーフ」
 声。振り払い、高原に捨ててきたはずの声。
 雷を砕いた拳具を放り、そのままの顔でエルヴァーン族が手をかざす。自分への挨拶の形であることに、ミリィは一瞬気づくのが遅れた。
「よっ」
「マク……!」
「と」
「愉快な仲間達だ」
 吟遊詩人が咄嗟に振り仰ぐ、左右に突き出した柱の上に、兵衛とリュークの姿が在った。



 時計の針は、わずかに遡る。
「おいでよ」
 ウルガラン峰の頂で、龍騎士ナィアは兵衛とリュークにそう告げた。飛龍ブリューナクの背中に、同乗のためのスペースを作り。
「来るんだろ。ミリィと……父さんのとこ」
「しかし……」
 赤魔道士が躊躇った理由を、兵衛は推し量れなかった。
 が、
「勘違いしない。君たちに拒否権なんか無いんだ」
「何?」
「二人は、ボクが何とかする。君たちは何かと便利そうだから、連れてくだけ……ああ、マクレーン君も途中で拾うよ。どうせ城には入れないだろ」
「何故そこまでする?」
「………」
 やや、有って。
 ナィアの次の言葉にリュークの瞳に力が宿るのを、兵衛は忘れないと思った。
「何とかしたいんだ。力、貸して」
「――わかった」

 そのナィアは今、回廊にいない。
 遠く上空に目をやれば、後ろ髪を引かれるように、つっかえつっかえブリューナクが離脱していく。
「…ビビったかな」
 赤魔道士が同意のサイン。
 現場の前までは来たものの、いざ乱入という段になって二の足を踏んでしまったらしい。「三歳だもんな」
 苦笑いを交わしたが、躊躇の意味を二人は軽く思ってはいなかった。
 意思の存在、或いは自らの存在そのものを自覚せぬまま生きてきた者が、初めて己が願望に従った。それは、自らの世界に対する決定的な反逆であり、破壊。旗を翻し、全てを壊し尽くした先に何も見ることの出来ない恐怖が、“自分の願望”というあまりにちっぽけに思える理由が、身を竦ませ、声を氷の内に封じる。
「それが自由意思というものか」
 魔導師の声に紛れも無い感慨と歓喜が宿るのを、その場にいる全員が耳にした。
「あの子が手に入れてくれるとは、な」
「放任し過ぎてるぞ」
「成功さ。結果としてあの子はここに来てくれた」
「え」
 ミリィが、はっと息を呑む。
 それはどういう――
「だが」
 轟!
 黒き衣をはためかせ、再度鎌首をもたげた魔力に、一斉に男たちが身構えた。
「誰が阻もうと、止まる気は無い」
「ディアス……」
 吹きつけるのは魔だけではない。恋人の思念。憎悪。意思。
 押し返すように、首を振る。共鳴し響く内なるものは、ミリィもまたなお衰えていない。
 凛然と弦に指を馳せ、言の葉を空に渡らせる。
「みんな、行こ」

『了解!』
「――気をつけて!」
 早速飛び出すモンク二人に、ミリィの鋭い声が飛ぶ。
「ディアス、息してないみたい!」
「息!?」
「そう息!」
 先刻までの会話の中で、吟遊詩人はそれを見抜いて――いや、聞き取っていた。黒衣の魔導師の発生は、気管を通るブレス特有の“ブレ”や“奥行き”を伴っていない。どうやって声帯を震わせているのか、そもそも呼吸無しで生命を維持できるのか理解の外にあるが、まともな状態でないことは確かだ。
 ボストーニュ監獄に繋がれる直前の、蘇生行為の影響だろうか……。
「らぁっ!」
 兵衛が空中で回し蹴りを打つ。それに扇がれるようにディアスの体がふ、と浮き上がり、そのまま矢のように舞い上がる。
「!」
 マクレーンの気弾が追うが、回避。予想以上の機動力に冒険者たちが目を見張る。
「これよ…」
 呼吸を伴わぬ魔導師の声。
「これが空を飛ぶということよ!」
「墜ちるがいい――!」
 高らかに唱う黒衣の頭上で、灼熱の火柱が爆散した。
 完全に不意を衝き、空舞う姿が呑み込まれる。
「リューク!」
「加減はした。が…」
 炎を放った赤魔道士は、なおも紅蓮の収まらぬ空からディアスが落ちてこないのを認めた。術の制御が健在なのだ。いや、それどころか。
「…ちっ」
 冷や汗が伝う。再び現れたディアスの黒衣に、焦げ目ひとつすらついていなかった。
「見えたか?ミリィさん」
「うん」
 吟遊詩人にも緊張の色が濃い。
 見間違えでなければ、炎が彼に迫る端から不可視の障壁に阻まれて逸れていた。多少の手心は加えたとはいえ、攻撃を完全に遮断する“結界(バリア)”など伝説の中にしか存在しない。人体に極度の剛性を持たせるストンスキンとも違うのだ。
「出鱈目だな」
 毒づくが、ひとつはっきりしたことも有る。
 魔導師ディアスの闘法は、極端に守備に偏っているということだ。
 空中浮遊に防御結界。禁呪級の大魔術を二つ同時に操りながら、他の精霊を使役して攻撃に転じることは不可能のはず――
 雷が生まれた。
「な…」
 リュークは呆然と見上げるしかない。古代魔法並の雷塊が、ディアスの手によって出現する様を。
(馬鹿な)
 知らず、首を振っていた。
 種族的な限界で、巨大な矛と盾の両方を人間は同時に行使出来ない。だからこそ白黒赤の三方に魔の研究は道を分け、それぞれに女神の祝福、魔力の泉、連続魔という“究極”の形を見出している。このうえ古代魔法を用いるのは、人類が営々と築き上げてきた探求の成果を根底から否定することに――
「落ち着け、リューク!」
「!」
 相棒の声に、我に返る。
 リュークが柱から飛び降りるのと、巨大な雷塊が解き放たれるのは、ほぼ同時だった。

 閃光――爆音――衝撃――
 それら全てが過ぎ去って。
「…ッ!」
 建材だったガレキにまみれて、赤魔道士が身を起こした。他の面々も無事らしい。
(助かったか…)
 リュークがいた柱が避雷針になって、雷を受け止めてくれていた。当の柱は粉々に砕け散り、周囲の床も半ば以上まで抉れ脱落していたが――
「王家が生かしておいたのも判るなあ…」
 声の主に、その場の全員が絶句した。
 ミリィ。
「あんなに魔法使えるんだもん。何とかキープして有効利用したくもなるわよね」
「み、ミリィさん…?」
「あ、大丈夫。怒ってないから」
 慌てたようにひらひらと手を振る。戦慄を伴う静かな表情が、一転して愛くるしく瞬きした。
「思ってたより凄い約束しちゃったなーって、困っただけ。どうしたらいいのかなあ」
「………」
 無言のまま、リュークは元の位置に戻った黒衣の男に目を向ける。
 策は、有る。
 策と呼ぶのもおこがましい、あまりに強引過ぎる戦法。だが、発案は躊躇われた。一歩間違えば、この方法では――
「殺してしまうかもしれんぞ…」
 間をおかず頷いてくるミリィに、思わず赤いシャポーを抱えた。

「兵衛、マクレーン、働いてもらうぞ」
 二人のモンクがそれぞれに応じた。赤魔道士に言われなくとも、力押ししか考えていない連中だ。
「一歩間違えば全滅する。半歩間違えばヤツが死ぬ。うまく逸らしてくれ――ミリィさんは――」
「歌う?」
「ああ」
 強く、リュークは首肯した。
「最期の歌になるかもしれん。皆に――届けてやってくれ」

「行きますか」
 肩を並べて、悠々と歩き出すマクレーンと兵衛を、ミリィは笑顔で見送った。
 その向こうには、無論――ディアス。
 すぐそこにいる恋人に伝えることが有ると思ったが、言葉は浮かんではこなかった。当然だ。全て、歌に籠めてしまっているのだ。
 だから。
 竪琴に指を馳せる瞬間、ありったけの想いがこみ上げた。
(聴いて下さい)
 旋律が、舞う。
(一緒に――歌って下さい)


 星々の 彼方へと
 求め 伸ばす 指先に
 触れたのは そう 貴方――温もり――


「良かったのか、兄貴?」
 散歩でもするように、兵衛は問う。
「なーにが」
「ミリィさんに何も言わなくて」
 は、と兄は一笑に付す。
「どんぺい、教えとく。こーいうドサクサでゲットした恋はあっと言う間に冷めちゃうんだよ。お互い冷静じゃないからな」
「はあ」
 モーションかけろと言った気は無かったが、思いがけない物言いに感心する。ディアスが目の前にいなければ、メモでも取っていたかも知れない。
「それに……な」
 少し間を置いた次の言葉は、長い付き合いの兵衛が初めて耳にするほど、真摯で、深い響きを帯びていた。
「ミリィにとっちゃ、人生で一番大切な日だ。俺ら外野が絶対に邪魔しちゃいけない時、なんだよ」


「そうかい!」
 ダンッ!!
 床を蹴鳴らし、兵衛が猛然と加速した。一瞬遅れてマクレーンが跳ぶ。地空両面のコンビネーション。
「破ッ――!!」
 右脚を竜と成す一撃を、ディアスは飛翔して避けようとした。
 が、足裏は床に着き、動かない。
(バインドか!)
 赤魔道士の根回しだ。レジストするのは造作も無いが、二人のモンクが打ち込むのには充分に行動が遅延する。
 バヂィッ!
 時間差を置いた蹴打と拳撃は、しかしことごとく結界に弾かれた。発生した斥力に抗しきれず、両者の体が宙を舞う。
「大地よ!」
 リュークの声。同時、二人の吹き飛ぶ軌道上にひとかかえほどの岩塊が出現した。超絶の反応でそれに足をつき、再度結界へと突っ込んでくる!
「無駄な…」
「どうかな!」
 逆襲は一度では終わらなかった。
 跳ね返され、モンクたちが飛ぶ先々に確実に岩塊が生まれ出で、再突撃の足がかりとなる。前後左右、そして上。結界を破り得るものではないが、襲う衝撃が他の魔術への集中を妨げ、同時にその場に釘付けにする。
「どんぺい、ここだ!」
 空鳴拳を弾いたその位置を、兵衛が確実に蹴り穿った。ひときわ大きく結界が揺らぐ。
「む」
「効いたか…!?」
 ピンポイントの攻撃は止まらない。地に足を据えたマクレーンが、乱れ打ちに打ち始める。兵衛は全面に蹴りを散らしつつ、兄と同じポイントを打つ際は必殺の気を纏う。足止めをしつつの一点突破、これが魔導師を打ち破る策か。
「愚かな」
「っぐ!」
 モンクの拳から、足から血がしぶく。
 結界の力が強まっていた。
 絶え間なく襲う衝撃の中、デリケートな魔力制御がされてゆく。魔導師、いや、魔道士ディアスの実力は、彼らの想像を上回っていた。
「だったら――!」
 マクレーンが一歩退き、兵衛もひときわ高く跳ぶ。この一撃に精髄を乗せ、ひと息に全て打ち砕くまで。
「宿れ!蒼き鳴……」
「遅い」
 豪――!!
 烈風ともつかぬ衝撃の波が、ディアスの結界から迸る。宙空に在った兵衛はおろか、マクレーンすら今度こそ完全に吹き飛ばされた。リュークの援護は――無い。二人のモンクは渡しより外れ、奈落へと落ち行く運命にある。
 直後。
 黒衣の魔導師は、まだ終わりではないことを知った。
 いや、これからが本命なのだと、目の前に現れた威容に悟る。
 雷の鱗纏う暴龍――
「さあ」
 連続魔。或いは最早多重詠唱(チェイン・スペル)か。無双の高速詠唱を誇る赤き魔道の士のみが生み得る、超々高密の雷の結晶が、ディアス=バラへと殺到した。
「魔天の扉を開けようか……!」
 ヴァァァァァヂヂヂヂヂヂヂヂュィィィィィ!!
 奔流が猛然と結界を喰らった。見る間に薄くなる障壁が、しかしギリギリのところで押し返す。元の厚みを取り戻し、両者の魔力が拮抗した。
 リュークの表情に焦りが浮かんだ。
 連続魔が生み出す高密の魔力は、押し合いに弱いという欠点を持つ。ひとつひとつは強くない雷を無数に凝縮しているために、単一の魔力塊に比べて力が拡散しやすいのだ。
 加えて、術者の問題も有った。体にかかる負担のために二日に一度しか行使できないとされる奥義を、リュークは既に三度用いている。限界は近い。いや、とうに過ぎている。
「!」
 ディアスの結界が押し出した。己の優位を確信したか、斥力を前面に集中させて暴龍を霧散させようとする。
 ――龍は。
 二体在った。
「ヴォルクニカ――」
 黒き魔導師のその足下に、炎の渦が湧きいづる。
 渦は柱と、龍となり、冷たき雪空へその存在を知らしめんとして立ち昇る。ディアス=バラを呑み込んで。
「ブレイズ!」
 赤龍に圧され、自ら浮揚するのではなくディアスの体が浮き上がる。
 黒衣の裾が灼けているのを、二龍の主は見て取った。結界が高熱を防げていない。
「賢しいわ…!」
 ディアスの結界が様相を変えた。
 前と、下。両面に全斥力を結集し、接触面が凄絶なまでの光を放つ。
 そして、支えた。命短き仮初の幻獣を、ディアスは完全に押さえ込む。
 ――が。
 灼けた黒衣が、凍り付く。
 天から、何かが迫り来ていた。
 がら空きになった自分の頭上。
(これは…!)
 二人のモンクが天より迫る。奈落へと消えるその寸前に赤魔道士の最後の岩を蹴り、高く舞っていた“本命”が。
(おお…)
 ディアスが、震えた。
 憎悪でも、憤怒でも、絶望でもない震撼にその身を貫かれながら、待ち望んでいたその一瞬を、その瞬間を、彼は待ち受けた。




 瞬く空 飛べるのは 貴方だけと目を伏せた
 水に映る 月と翼 幻ねと歌に込め

 消えてゆく その背中 どこへ還るかも知らず
 ただ紡ぐ ただ歌う 愚かしい孤独を

 とこしえ想う凍える夜も
 光の雨に打たれた朝も
 いてくれた――ねえ――いてくれたのに

 胸の中 聞こえた 貴方の名は 約束
 腕の中 受け止めた 貴方との 約束

 時を経て 時を越え 今 それを果たそう
 遙か遠く 道の果てに 新たな貴方を抱こう
 忘れていた あの日の扉 二人で開くように

 夜を越え
 陽を越えて
 どこまでも飛ぼうよ
 忘れていた 扉の鍵 二人で開くように――





「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお――――!!」
 ヒュームの蹴りが。
 エルヴァーンの拳が。
 黒衣の肩と脚とを砕き。
 魔導師は、足下の闇へ、降り立った。

 ざ…あ…
 渡しに佇むディアスの体から、微細な粒子が噴き上がった。
「な…」
 男たちは立ち竦む。
 リュークの“策”は、成功していた。
 首尾良く本命の露払いは成り、モンクたちの一閃もまた確実に急所を外してディアスの生命を保ちつつ無力化した。
 した、はずだ。
「ディアス!」
 棒立ちになる間を縫って、ミリィが駆け寄る。
「ディアス、ディア――」
 黒衣に触れて、息を呑む。
 粒子の正体を、ミリィは悟った。それは、彼の肉体そのもの。彼を形作る極小の欠片が散離し、空に消えていく。
(まさか…)
 ひとつの仮説が、赤魔道士の脳裏をかすめた。
 ディアスは――ひと度死んだ魔導師は――こうなろうとする肉体を、魔力で繋ぎ止めていたのではないのか。
 心拍数の低下に反応して自動的に蘇生を促す、リレイズという術が有る。浮遊の実験を前に自らの死を予期したディアスは、あれを仮初めの死者蘇生術まで昇華していた……?
「世話を…かけたな…」
 声は、どこまでも安らいで。
 抱き締められる腕の中、ミリィは嗚咽を噛み締める。
「本当に、本当によく…守ってくれた…ありが――」
 音を立て、右の半身が吹き消える。
「ディアス」
 マクレーンが歩み出た。
「俺の魔力、使えねえかな」
「………」
「ショボいけど、おやつくらいにはなんだろ?軽くハラに入れてカニか何かからもらいに行きゃ、まだ助かるかも……」
「感謝する。だが…私はこれで良い…」
 歓喜が、憎悪を超えた今。
 穏やかに、安らかに旅立てる今、留まる理由は無くなった。
「そうか…」
「娘の…成長した姿も見られた…先に逝った不孝者を……これ以上一人にしたくないのでな…」
 赤魔道士が目を伏せる。負うな。優しい、魔導師の声。
「ミリィ…」
 残った片腕で、栗色の髪を撫でつける。
「苦労を…かけたな…」
「ううん。――ううん!」
「共に、扉を――開けなくて――済まない――」
 かぶりを振るう胸の中、限りない温もりに抱かれたのはディアスか、それとも、ミリィだったか。
「誰かと……これからは――私では――ない、誰か――と――」
 さぁっ。
 雪空に、惜別の花びらが流れて――
 空っぽになったぼろぼろの黒衣を、ミリィは強く、強く抱き締めた。



「……?」
 それは、ほんの微かな違和感。
 兵衛がちらりと、脇の奈落に目をやった瞬間――大量のアーリマンが渡り廊下を包囲した。
「な…!?」
 魔力を使い果たしたリュークに、マクレーンはミリィに駆け寄る。咄嗟に一箇所に固まった直後、内殻へと続く扉を破ってデーモン族までが回廊に雪崩れ込む。その数……いや、数えるだけ無駄だ。
「こいつら…」
 仇討ち。
 兵衛は直感する。この城に住まう闇の血族はディアスに従属していたらしかった。新たな闇の王となるべき資質を充分に備えていた者に。
「だとして今さらか!?今まで何を…ぐっ!」
 単眼から発する波動に打たれ、たたらを踏む。
「指ィくわえて何してやがった!」
「ディアスがいたから…」
 中央にかばったミリィの声。
「案内してくれた人が言ってた。“先代”の王との融合を終えるまで、本来は誰もここに入ってはいけないことになってる…って…」
「トンチキなことを!先代ならとっくに……」
「嘘だったんだと思うけど!」
 彼らの侵入を妨げていたのは、他ならぬディアスの厳命だった。「我が真に闇を継ぐまで、何事の有ろうとも立ち入る無かれ」。次代の王が下した命を頑ななまでに遵守した。
 だからこそ、燃やす憎悪は凄まじい。
「なかなかの忠義だね」
 ――声は、空から来た。
 剛――!!
 単眼の群れを、デーモンの陣を切り裂いて、翼持つ影が二つ飛来する。
 ひとつはナィアの従える飛龍ブリューナク。もうひとつは、その声の主――
「ザフィア!?」
「やあ」
“竜人”ザフィアは片目を閉じた。傍らの相似の貌(かお)を持つミスラが、慌ただしくブリューナクの背を叩いている。
「話、後!乗った乗った!」
「…俺らを助けるのか?」
 懐疑の兵衛に、ザフィアは表情を引き締めて。
「ボクは、ディアスの騎士だから」



 ※  ※  ※



 王都は早朝から騒然としていたが、悪い意味でのものではなかった。
 木彫師、鍛冶師、彫金師、石工、大工、冒険者。腕に覚えの建築芸術家が中つ国全土から押し寄せて、好き勝手に気勢を張り上げている。
 ドラギーユ城東の一角と、ランペール門が全壊したのだ。再建に一枚でも二枚でも噛んで名を売ろうという輩は多い。そんな国家の一大事業を他国の連中に担わせるほど、王家も緩んではいないだろうが。
 そんな、いつもより多い雑踏に紛れて、ひと組の男女が往来を行く。
 兵衛と、ミリィ。
 それと気づいた通行人に好意的な声をかけられては、どこかぎこちなく対応している。
「ふー…」
 息をつくミリィに同意するように、兵衛も小さく苦笑を浮かべる。
 ――あれから。
 飛龍ブリューナクの翼でズヴァールの空域を離脱した彼らは、議論の末、王都に“出頭“した。野暮用が有ると言い張るリュークと、ナィアを除いた四名で。
『必要なら後で行く』
『ちょっと…心の準備っていうか…』
 しかし、彼らを待っていたのは無条件の歓迎だった。毒物テロで王都を混乱に陥れ、ボストーニュ監獄を爆破した“凶悪犯イクシウス=ハイラル”を、北の地で討ち取った功労者として。
『そういうことになっている』
 召し出された城で待っていたクリルラが、隻眼を固く閉ざして言った。
『今朝の騎士団の出動も、“イクシウス=ハイラル”の流言に乗せられた結果だ。お前たちは謂われ無き汚名を雪ぎ、見事名誉を回復した――と、これは事実かな』
 その後、神殿騎士団長は開眼し。
『……私の命は果たしたか。ザフィア』
『はい』
 力強く頷いた竜騎士は、先だって兵衛たちにも述べていたことを繰り返した。
『あの人の、本当に守護すべきもの……あの人が守りたかったもの。守り抜いて来たつもりです』
『命以外の、何かを?』
『はい』
「すっきりは、しませんよね」
 苦く笑ったまま、兵衛は口にした。ザフィアのことではない。
 ――これで良かったのだと、思う。
 今回の一件、真実がありのまま伝わってしまえば、大戦とまではいかないまでもどんな問題が噴出するかわからない。事なかれでお茶を濁してしまえれば、それに越したことはないのだ。
 ただ、
(ディアスは結局死んだまま…か)
 追放され、闇に消された魔導師は、今度こそ闇の底へと還った。謂われ無き汚名を雪ぐことも出来ぬまま。
「汚名なんて、無いわ」
 ミリィの言葉に、苦笑が消える。
「そりゃ、みんなには悪い覚え方されちゃったけど……それは大したことじゃないもの」
「そうかなあ」
「だって、ほら」
 吟遊詩人は、そっと胸に手を当てる。
「ここにいるから」
「………」
 それを、暫しじっと見詰めて。
 兵衛の目蓋に、ふと、ヨルムンガンドの巨躯がよぎった。
「…ですね」
 頷く。
 世界は、広い。ヒトの理解が――ヒトの社会が及ばない領域が、見渡す限りに広がっている。
 そんなアンノウンのひとつに、他でもない、“心の中”が有る。
「そ」
 栗色の髪の吟遊詩人。思わずどきっとするほどの、とびっきりの笑みを浮かべて。
「大丈夫。問題無いわ。だって、私が覚えてるから」
「はい」
「――時々怒りたくなるけどね」
 笑みがふんにゃりと趣を変えた。
「じゃ、また」
 手を振って、ミリィの姿は往来の中に消えていく。目指すのはレンブロワ食料品店。「取ってた休暇オーバーし過ぎた」と下城後真っ直ぐにバストークに戻った、未来のご亭主(候補。大穴)に頼まれた買い出しらしい。
「持ちきれるだけで抑えたんだろうな…兄貴…」
 手伝った方が良かったかも知れない。とは言うものの、実は兵衛もそれどころではなかったりするのだが。
「…おし」
 何やらおもむろに覚悟を決めると、ポーチをまさぐって、漆黒のリンク・パールを取り出す。
 口を引き結び、二、三度深呼吸をして……
 思い切って、回線をオープンにした。
「……おはよ」


「…?」
 ゴブリンが、ふと首を傾げた。
 ズヴァール城の、その最奥。
 王の間へと続く回廊の修理をダラダラと行っていた彼らは、ほんの微かな声を聞く。
 どことも知れず。誰とも知らず。ほんの微かな声を聞く。
 風の吹かない回廊に踊る、それは、ひとつの夢の残り香。
 命の渡り。
 心の歌。
 voice of the...



 fin.
投稿日時:2007-08-23 22:17:42
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[008] ぬぉうっ!?
投稿者:さそ(下級職人) 投稿数:50
才のぅ……とは違うと思うけど、わざわざ感想ありがとうございますです。読んで頂けて嬉しい限り。
次回作いつだろうねえ。ネタは有るんだけどねえ……やけにバラバラでひとつの構想としてまとまらないと言いますかその。

でも、次回出演了解しました。頑張って組んでみますよう。
点数:0 点
投稿日時:2007-09-16 14:01:31
[007] 新作とかいつだよっ
投稿者:猫忍(--) 投稿数:--
こんな才能があるとは知りませんでした〜
11と12しかまだ読んでいませんが
後でじっくり読みたいと思います。

今度は私も出してくださいww
期待してます。
点数:10 点
投稿日時:2007-09-14 01:08:12
[006] 一年で10点合計20点!
投稿者:さそ(下級職人) 投稿数:50
御馳走様でしたッ!!

二年間――と呼ぶにはあまりにスカスカな密度の続きもの――にお付き合い下さり、ありがとうございました。

ちょびちょび読み返して思うのは、本当に一人で書いてないなあということです。
ご両人や皆様からの温かいお言葉という意味も勿論ながら、それぞれのsectを書いていた頃に読んでいた小説やら漫画、観ていた映画、ドラマ、アニメなんかの影響が文体や細かい語彙にアリアリ(アリアリアリーヴェデルチ)で、懐かしいやら恥ずかしいやら。
まあ、感化されやすいのは当方生来の性質ではあったのですが(笑)、当作に少しでも魅力が有るとしたら、そういった語彙や技術を吸収・拝借させて頂いた数々の名作たち、そしてその作者様方のお陰に他なりません。
ひとつのエピソードを書き終えた今、実感としてそのことを深く感じています。

本編中では語りきれなかった側面や後日談など、派生ネタは色々残っているので、また折を見てお届け出来ればと思います。今度は、今度こそはすっかり忘れられないうちにそれが実現できればいいなあ…笑えねぇ。
点数:0 点
投稿日時:2007-08-28 09:10:42
[005] あー……
投稿者:Bandit(目録) 投稿数:137
なんつーかもう、「あー……いやー……うん。うあー……」という、間抜けに腑抜けた非人間語(笑)ばかりが出てくるのです。
あー……(※repeat)

いやー、いいですねぇ。いいですよ、うん。いや本当に。
Finalに相応しい盛り上がりと仕掛けと、そして愛しさと切なさと心(ry。
みんなかっこいいよ。アホっぽい感想だけどそれに尽きる。
ダブルモンクも赤魔道士も詩人も暴走魔道士(爆)も、みんなかっこいい。
ミリィちゃんの歌はいじらしいしリュー君は凛々しいし。
そして特に空から振ってくる力押し達(笑)の迫力は目に見えるようでありました。

ラスト1節、本当にじーんと来ました。進む道を分かちながらもついに離れることのなかったであろう彼らの、憎たらしいくらいに素敵な終わり方です。
ええいもってけ10点! ご祝儀じゃないぞ!

さそさんは「その場面で使える語彙の底辺が広い」と思います。
確信犯的にやや時代モノ寄り(?)ですが、その味は出そうと思って出せるものじゃない。時折見せる常用でない単語の蓄積っぷりには目を見張ってきたものです。
更にキャラ同士の絶妙な掛け合い、遊び心に富んだ戦闘シーン。どれも魅力と言うに十分なものです。

という事で、是非また新しい作品なぞ書いてくださいです。
もしくは番外とか。男三人衆とか吸血鬼さんとかの(←個人的願望)。
地下牢の解毒剤シーンとかパシュハウのシーンとか氷河のシーンとか、今でも印象に残っております。

とまぁ言葉は尽きないのですが、ひとまず。
2年間お疲れ様でした&面白いお話をありがとうございましたー。
点数:10 点
投稿日時:2007-08-24 22:43:26
[004] ディアーーーース!!;;
投稿者:JR(名取) 投稿数:96
 感動しました。死闘後のラストシーンは心に残るものでした;;(号泣)
 二年間に渡る長期の連載お疲れ様でした。そしておめでとう御座います。
 さそさんの作品で何より印象的であったのはカメラワークと言葉の勢いであったと思います。(何を偉そうに;)
 1シーン、1シーンのメリハリといいますか、そういったものがとてもはっきりしていて、思わず笑いが零れてしまうシーンから息つく間もないような緊迫したシーンまでお上手に繋ぎ、展開されていたように思います。
 そして、そのシーンを構成する一言一言にも迫力があり、ずいずいと押し迫ってきました。
 じっくりと英気を養って次回作で爆発させて頂きたいと思います!! 最後にもう一度お疲れまでした。これからも楽しみにしています。頑張って下さい。長々と駄文失礼致しました。
点数:10 点
投稿日時:2007-08-24 01:58:08
[001] ありがとうの前に言っておく!
投稿者:さそ(下級職人) 投稿数:50
あ…ありのまま、今起こったことを話すぜ!
「七月いっぱいに完結させると宣言したら八月下旬になっていた」
な…何をやっていたかわからねーと思うが俺も自分が何をしているのかわからなかった…プロットがどうにかなりそうだった…遅筆とかスパロボ面白過ぎとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…(グググ)

……。

あい、最終回です。
文中では説明出来ませんでしたが、『魔導師』とゆーのは先の回で出ていた『魔導研究家』と同義です。これだといまいち格好良くないので勝手に弄ってしまったのですが、うーむ判りづらかったかも…申し訳ありません。
それも含めて、ここに来て初期の伏線がやたら炸裂しまくっとります。誰一人として覚えちゃいねえ。

なんかもー思い返せばsect1で初めてお目にかかったのが二年前の七月で、しかも二回ほど常軌を逸した間の空き方してるし自分アホかと思う一方、ここまで引っ張らなければ物語としてもテーマとしてもこの終わり方はしなかったわけで(結末が変わったという意味ではないですよ)、そう考えると感慨深いものもちらほら。ナィアの処遇とかミリィがディアスんとこ行く理由とか全然こんなんじゃなかったもんなあ。今思うと後悔するしかないよーな内容でした。うん。

アトルガンミッションもメじゃねえ亀ウォークっぷりで読者様方には大変なご迷惑をおかけ致しましたが、作者的には(少なくとも書き終えた今の時点では)ある程度満足いく内容となっておりますそんな気がします。もちろん反省点や後悔ポイントは海よ山よと満ちあふれており、全面改稿したいシーンがあちこちうようよしているのですが(特に序盤)、そうするくらいなら新しいお話に無念をぶつけてやるべきかなぁと、そんな風に思う次第です。
新作とかいつだよってツッコミは無しでsy

とゆーわけで、二年間、全十二話に渡ってお送りしてきました当『voice of the...』。
ここらでお開きとさせて頂きます。
長らくのおつきあい、本当に本当に本当に――
有り難う御座いました。
点数:0 点
投稿日時:2007-08-23 22:26:55
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