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名も亡き英雄 -Page8-
投稿者:JR(名取) 投稿数:96
ジャンル:ファンタジー
点数:16 点
----------a scene A-a

 空が、のっそりと模様替えを始める。女神が瞑目していた瞳を開き、その恩寵が、分け隔てなくヴァナ・ディール(この大地)へ降り注ぐことであろう。だが、そんな普遍の光明すら及ばない場所があった。タブナジア界隈、名も無い森。凍結した、別の次元。
 この取り残された次元に閉塞されたのは、二つのシルエット。一人は、地面へ根付いたように腰を沈め、一人は、そのシルエットへ双眸を置いて佇んでいた。この名も無き森で遭遇した、女侍と少女である。
 恩恵が、この敷き詰められた叢雲(そううん)の合間を掻い潜って、なんとか二人へ、時間が流れていることを知らせようとするが、叶わない。空の色は変わらない。この、暗澹とした感情の密集を晴らすには至らない。
 止まない雨がないように、枯れない涙もない。彼女の小躯を、内側から掻き乱して震わせていた感情達は、どうやら眠りについたらしい。騒ぐだけ騒いどいて。この小さな少女を置き去りにして。少女の双眸は、ずっと同方を向いていた。父が居た場所。そして、父が消えた場所である。泣き腫らして真っ赤だというのに、伽藍として力が無い。長い年月を経て、光を損失した宝石のようであった。
 枯れない涙がないように、巡らない思考もない。空転を繰り返していた女侍の思考へ、微風が吹き通る。稲妻よりも速く、小波よりも穏やかに。しかしそれは、停滞して机上の空論を繰り返す思考を総浚いにしていった。眉が、ピクリと震える。胸元へ、ざあと波紋が拡散した。彼女の双眸へ怯臆が渡ったのはその刹那であった。
 不安になる。数歩進んだ先で消沈する少女を眺めながら。感情という感情を喪失し、その場に根付く彼女は、まるで亡霊のようであった。腐爛し、どろどろにとろけて、大地と一体化して眠ってしまうようであった。彼女もまた、眼前から消失してしまうのではないか。先程消失した彼女の父親のように。怯臆は、断続的に彼女の心へ波紋を描いていた。増幅する臆病心が、一目では性別を判断出来ない凛然とした顔立ちへ滲んでいく。
 少女が心配になってか、それとも、執拗に渡る怯臆へ耐え切れなくってか、女侍が、足を前方へ一つ出した時であった。

―― ジェニー、応答してくれ。ジェニー・オルソー ――

 思考内へ渡る男の声。女侍――ジェニーの表情が弾けた。知っている声。仲間(同僚)のものだ。
―― シンか。私だ。ジェニー・オルソーだ ――
 怯臆が一瞬で吹き飛ぶ。消失したように。クリアになった思考の最中へ、シンと呼ぶ男の声が再度渡った。
―― 良かった。良かった、ジェニー。生きていてくれたか ――
 嬉しそうに滲むシンの声。ジェニーは、『あんたこそ』と“言葉”には乗せずに応える。
―― しかし、お前に謝らなければならない事がある・・・・・・ ――
 変化するシンの声色。
―― タブナジアが陥落した。主をお守りする事が出来なかった ――
 ジェニーの表情が、再度弾けた。思考は津波に圧倒され、伽藍になる。波が引くのと同一の速度で、血の気が引いていった。自身は、如何程沈黙していたのであろうか。向こうからの言葉も渡ってこない。― そうか ―ジェニーは一言零して付言した。
―― 今、お前はどこにいるんだ ――
―― ・・・・・・、ああ、我々は生存した民を連れて地下施設へ逃げ込んだ ――
 少し間を置いて、シンが返答した。無理に釣上げた声色は、僅かに上擦っていた。続けて話す。
―― 大聖堂よりフォミュナ水道を抜けた先だ。こちらから使いを遣そう。枢機卿殿が獣人共の追撃の手を逃れるために、能力を制限する呪法を施された。お前一人では危険だ ――
 ジェニーは、少女へ意識を向けた。依然その様子へ変化は無い。沈んでいる。亡霊のように。
 彼女の思考へ、二つの思案が交錯して巡った。こちらへ赴援してくれるという、仲間達の事。そして、少女の事である。彼らとて現状で手一杯のはずである。出来れば手間を煩わせたくない。だが、しかしである。自身一人で少女と指定された場所まで無事に赴く事が出来るであろうか。凛然な顔立ちから表情が抜けていた。だが、それは伽藍というよりも、明澄と呼称した方が相応しいであろう。落ち着け。沈然とせよ。自己へ命じ、交錯する二つの思考を天秤へかける。そして。
―― わかった。私は何処へ向かえばいい? ――
―― 大聖堂の前にしよう。フランクランの小隊を向かわせる ――
―― ああ、判った ――
 ジェニーの応答を最後に、会話は終了した。彼女は、先程一つ差し出した歩みの後続を差し出す。その表情へ怯臆はない。足を停止する。その行方は少女を回りこみ、その眼前へまで至っていた。膝を折る。無造作に垂らしていた少女の手を取り、口を開いた。
「行こう」
 少女の石ころと、ジェニーの眼差しが重なった。その時、少女が何を思ったかなぞ、自身にすら知れない所だ。本当に、何も思案していなかったのかもしれないし、言い様の知れない感情が、森然と心内で息吹をあげていたのかもしれない。ただ、頷いた。真っ赤に泣き腫らしたその双眸で。口元を弱々しく結んで。理性ではなく、本能で知覚したのかも知れない。眼前の女性の表情が、自身へ父を探しに行こうと言葉をくれた時と、同一の表情であった事を。ジェニーが笑みを深めて、大きく一つ首肯した。屈めていた身体を起こし、少女へ手を差し伸べる。少女はその手を取り、ジェニーに引き上げられながら、長い間沈めていた腰を持ち上げた。ジェニーが歩み出し、その後ろに少女が続く。目指すは、陥落したタブナジア侯国大聖堂前。同僚――フランクランの元である。

----------a scene B-a

 タブナシア侯国大聖堂。無残に倒壊したその前に、幾許のシルエット。皆一様に、制式の鎖帷子を装着している最中に、その姿はあった。メイジシリーズを纏ったタルタル族。メイジハットの下に、性別を一別出来ない顔立ちがある。その口が紡いだ。
「ストンガU」
 方陣が包む。敵も味方も一緒くたに。刹那。大地がくしゃみをあげて、爪牙を突き出した。剥き出しにされた凶手がオークを貫穿する。辛うじて命を取り留めたオークの一体を、近くにいた鎖帷子を装着するヒューム族の青年が、袈裟懸けに切り伏せた。今のが最後の一体であったようだ。周囲を見渡していた、メイジシリーズのタルタル族が手を当てて口を開く。
「さあ、ここいらのオーク共の排除は終わった。皆、一休みしよう」
 衆兵が一斉に腰を下ろす。得物を傍らへ置く者。装着していた甲冑を脱ぐ者。食料を取り出す者と、各々で私事を始める。その最中を縫って、タルタル族へ近付く者がいた。ハイドラハーネスを纏ったミスラ族。タルタル族は、彼女が払った敬礼へ、すっと軽く腕を上げて返す。彼女へ顔を上げて口を開いた。
「座らないのか?」
「上司の前ですので」
 そういう彼女の、表情も声色も穏やかだ。緊張した面持ちなぞ、一片たりとも見当たらない。彼女の名はチェル・フラウ。この小隊の副長である。そして、彼女が上司と呼んだ彼こそが、この小隊の隊長、フランクランであった。内心で溜息を吐き捨てるフランクラン。顔を逸らす。
「それで、死傷者は?」
「いいえ、誰某(だれそれ)様のお陰で死者は愚か、負傷者すら出ていませんよ」
 今度こそ本当に溜息を一つ。呆れ顔で彼女へ瞳を上げるが、表情に変調は無い。諦めたのか。彼はメイジハットを傍らへ置き、小袋へ腕を突っ込んだ。煙草を取り出し、咥える――と。
 ヒュン。細やかな音が閃いて、咥えていた煙草が姿を消した。哀れなり。その末路は、大地に突き刺さった弓矢の中程で串刺しに。この曲芸のような神業をやってのけたのは、穏やかな笑みを浮かべるフランクラン小隊が副長――チェル・フラウであった。睥睨をくれてやる。開口したのはチェルの方であった。
「健康によくないですよ? 隊長。それに、我らが大魔導士様の喉が潰れてしまっては大変ですわ」
 この女。本日二回目。頭を垂らし、うんざりと言った様子でまざまざと太息を吐き捨ててやるが、効果は無い。「ん?」とチェルが零す。不思議そうに彼女へ顔を遣ると、睇視して一点を睨み据えていた。彼も同方へ顔を遣る。二つのシルエットが歩み寄っていた。長身痩躯のものと、その腰元程度のもの。
 やがて、その正体が認められる程度にまで歩み寄って来る。口を開いたのはチェルであった。
「ジェニーさん!」
 「本当か!?」と顔を向ける上司へ、チェルは大きく首肯する。そのまま駆け出した。彼女を見送るフランクラン。腰を上げて、再び口元へ手を当てた。
「よおし、皆、出発だあ。準備しておけ!」
 私事をしていた隊士達がぞろぞろと腰を持ち上げる。フランクランは、傍らへ置いていたメイジハットを手に取り被ると、チェルへ続き、ジェニーの元へ歩み始めた。

----------a scene B-b

「やあ、よくぞご無事で」
「ああ、あんたの方こそ」
 フランクランは、それ以上開口しなかった。ジェニーも、そして、既にその傍らへ居たチェルも、その意を充分に理解しているのであろう。不快感を示す様子は無い。
 やはりシルエットの正体は、同僚のジェニー・オルソーであった。もう一つは、同族の少女だ。頭を落とし、垂れる毛髪に隠れた少女の表情は暗い。まるで人形だ。侯国随一の戦闘力を誇ると謳われるジェニー小隊が、隊長の彼女を除いて全滅。その見返りが、傍らのこの少女一人である。その道程が、険難にして凄惨であったことは、聞くまでもない。それに、彼女の双眸の最中には希望も窺える。絶望の最中で、ゆったりと、もがくようにうねりをあげる希望が。
  一礼を済ませ、振り返るフランクラン。そのまま動作を止めずに歩み始める。二人と少女も、それへ次いで歩み始めた。
「聞いていると思うが、水道内は枢機卿殿の結界が施されている」
 小隊長クラスであるフランクランが、メイジシリーズであるのはそのためだ。応答は無い。しかし、彼女が少女を握る手に、ぎゅっと力が篭もる。それでも少女の様相へ変調は無かった。二人の様子へちらりと瞳を泳がしていたチェルが口を出す。
「私はカフタンの方が良いって言ったんですけどねえ」
「ほお、ならばお前こそ、セパレーツでも着てくればよかったんじゃあないか?」
「あら、そんなに私の脚が見たかったんですか?」
 一本。鮮やか。反撃の反撃、小隊長殿に成す術はない。一方の副長はしてやったりといった笑顔。その隣では、ジェニーがくつくつと声をもらして笑っていた。顔を僅かに落とすフランクラン。メイジハットの鍔を目深にする。四人は、隊士達と合流すると、そのまま行方を、倒壊した大聖堂へと伸ばした。

----------a scene B-c

 時も、場所も同じくして、二つのシルエットがあった。倒壊した大聖堂へ向かう一行の様子を遠目で窺っている。
 一つはヒューム族の少年。年端は、上記の少女とそう変わらない様に思える。駆け出しの冒険者であろうか。纏うのはチュニック。付属のフードを外し、顔立ちははっきりと窺えた。黄褐色と呼称するには、僅かに白い玉肌(たまはだ)。毛髪も双眸も黄金。小麦畑と同一の淡彩な黄金色だ。
 その傍らに佇立するのが、もう一つのシルエット。フォルムはミスラ族。派手な装飾のバイソン装束を纏っている。バイソンボンネットより除く顔立ちは、割合清楚であった。やや褐色をした肌。毛髪は肩甲骨辺りまで伸びている。白。前後に余計な形容を必要としない純白だ。しかし、何よりも特徴的なのは、その双眸である。宝石。そう呼称する他にあるまい。ムーンストーンのような双眸は、鼓動を連想させない伽藍としたものであるが、自然と惹きつけられてしまう、不思議なものであった。この二人が並んでいると、まるで一枚の絵画のようである。
 廃墟の瓦礫に腰を下ろしていた少年が、その悠然と微笑みを湛える口元を開いた。
「随分ご執心の様だけれど、彼はもういいのかい?」
 ミスラ族は、体躯の脇に垂らしていた左腕を持ち上げる。ゆっくり、ゆっくりと。まるで、人の躯をなぞるように。自身の顎を渡り、中指の先が、下唇に触れた。放心した風に無造作に開いた口元が、そっと開く。丁度、その柔肌へ触れる指先を持ち上げるのと、同一の速度で。
「まさか・・・・・・・。ただ、どうせやるのであれば、より壮麗であった方が良いでしょう?」
 声音に力が無い。もしかしたら、本当に“心ここにあらず”なのかもしれない。双眸へ、どろりとした粘着質のある情感が、ゆったりと渦を巻いていた。
 先程からずっとこの調子だ。ここへ向かう途中にあの少女を“発見”してから。“あの少女”とは、自身達が眺める一団の最中で、放心して歩調を“合わせている”エルヴァーン族の少女である。
 一団が倒壊した大聖堂の最中へ、ぞろぞろと入っていくのを認めると、少年が下ろしていた腰を上げた。
「さて、行こうか」
 零して歩み出す。ミスラ族に返答する様子は窺えない。未だに変調せず、一団――少女を眺めているばかしだ。
 彼女が動き始めたのは、暫くしてからであった。ずっと下唇に触れていた中指を、再度体躯の脇へだらりと垂らす。
 その双眸へは依然どろりとした光明。ゆっくりと調教してあげる。じいっくり、じいっくりとね。目尻が僅かに歪む。下唇を舌でなぞると、彼女も漸く歩き始めた。

----------a scene C-a

 フォミュナ水道を抜けたジェニーと少女を含む一団。その先には、小さな空間と、くたびれた群集の姿があった。一団の姿に気付き、はっと表情へ花を咲かせる者がいた。誰かが、一団の帰還を叫ぶ。そこかしこからざわめきが、波のように起こる最中、ガラントシリーズを纏ったエルヴァーン族が、変調せずに一団へ歩み寄る。剃り込みが側部に二つずつ。前髪と側面は、根元から後方へせせらぎの如く伸びている。色彩はアイボリーホワイト。肩にまでも及ばない短髪だ。同色の眉の下には、やはり同色の双眸がある。強い輝きを湛えた誠実で、純然とした双眸。彼の精悍な顔立ちを更に際立てていた。彼こそが、前述において、ジェニーと連絡を取り合っていたシンその人である。その双眸には安堵と、名残を残す不安を、その口元には小さな笑みを浮かべている。
 適当な距離まで彼が歩み寄ると、フランクランが、敬礼を払って口を開いた。
「フランクラン小隊。ジェニー・オルソー殿の護送任務から只今帰還した」
「ああ、ご苦労であった。皆、ゆっくりと休んでくれ」
 敬礼を返すシン。穏やかな調子で応えた。フランクランが、解散を宣言する。隊列がぞろぞろと列を崩し、各々で歩き始めた。
 残っているのはジェニーと、彼女と手を繋ぐ少女の二名だ。シンの双眸は、ジェニーを向いていた。ゆっくりと手を差し出す。
「・・・・・・よく戻って来てくれた。本当に、よく無事で」
 僅かにくぐもった声色。ジェニーも手を返す。
「ああ、只今」
 二つの手が重なり、強く、握り合った。結び合った瞳と手から、思考が交錯する。よく無事で生き延びてくれた。互いの想いが、互いの血流へ流れ込み、絡み合う。
 如何程の時間が経過したのか。結び合っていたシンパシーを解いた。繋いでいて手を解き、エルヴァーン族の視線が、傍らの少女へ泳ぐ。口を開いたのはジェニーの方であった。
「森で出会ったんだ。この国の子じゃあないらしい。この子も一緒においてやりたいんだけれど、いいだろう?」
「ああ、勿論だ。よろしく。タブナジアは君を歓迎する」
 穏やかに笑んで腕を差し出すシン。しかし、やはり少女に反応は無かった。ジェニーの表情が僅かに曇る。一様に反応を示さない彼女への不快感ではなく、どうしたら良いかわからない自身への苛立ちであった。シンも、そんな少女の様子へ、不快感を示した様相は無い。
「ジェニー、一緒に来てもらえないか? その子はシスター達へ預けるといい」
「ああ、判った」
 言葉を終えて振り返るシン。そのまま歩き出した。ジェニーも返答すると、少女へ視線を泳がす。「行くよ」と言葉をかけ、彼の後に続いた。

----------a scene C-b

「お帰りさなあい!」
 角を曲がった二人を、明朗な声色が出迎える――と。ジェニーは、佩帯していた得物へ手を掛けた。
「相変わらずだな、リィ」
「うん、うん! ジェニーの方こそ変わりなささそうで、嬉しいよ!」
 呆然とするシンの隣。まったく、とでも言いたげな、うんざりとした顔のジェニー。その眼前には、満面に笑顔を咲かせるミスラ族。そしてその首元には、ジェニーの得物の刀が、冷たい躯を寄り添わせている。歓迎の一幕にしては奇妙な構図である。
 彼女がリィと呼んだのは、眼前のミスラ族だ。タブナジア侯国近衛騎士団が一つ。リィ小隊の隊長を務めるリィ・ネアナヴルである。
 纏うメレーシリーズの下から、しなやかな筋骨が顔を覗かせている。カーキ色の短髪。サイドには結髪がぶら下っている。幼年期のように、無邪気に笑うその顔立ちには、ミスラ族特有のメイクが施されていた。
「もお、リーダー、止めてください。恥ずかしいではありませんか」
「えっ? えっ? そうなの?」
 そんなリィへ注意を放ったのは、彼女の補佐を勤めるリィ小隊副長のアンナ・リア・ゼフティーだ。リィと同じくミスラ族。彼女より頭一つ分背丈は長く、ローグシリーズを纏っている。毛髪は、炎にも劣らない真赤な朱色。ボンネットの下から、前髪が顔を覗かせている。げんなり。一杯へ彩られた顔は天へ。グラビデでも仕掛けられたように重い頭へ、左腕を被せている。そんな補佐役の気苦労なぞ知らず、リィが不思議そうに振り返った。アンナは溜息を一つ。パートナーに手を焼いている人間が、ここにも一人。最も、その性質(たち)は全く異質ではあるが。周囲から笑みが零れる最中、リィの思考には、依然クエスチョンマークが散乱しているようだ。そんな最中、未だに口元に笑みを湛えたシンが、皆の注目を集めるように手を二回叩く。思惑通り、皆の視線がシンへ集まった。
「それじゃあ、そろそろ話を始めよう。それより、枢機卿殿はどうしたんだ?」
 枢機卿ミルドリオン。アルタナ信仰タブナジア派の主導者で、国民や、隊士達の信頼も厚い。この議会に出席してもらうように、言伝しておいたはずなのだが、その姿が見当たらない。これへ返答したのは、仰いでいた顔を正視したアンナであった。 
「枢機卿様だったら野暮用があるとかで、二人が来る少し前に出て行きましたよ。お会いしませんでしたか?」
 思案顔になるシンとジェニー。擦れ違っていたのなら判りそうなものだが。また、後程にしようか。否、一時でも早く、復元の準備をしなければ――――。シンが再度口を開く。
「先に議会を始めてしまおう。枢機卿殿には、後から俺が伝えておく。皆、適当な席に座ってくれ」
 広間の中央に位置する長机を、囲むように置かれた九つの椅子。広間に居合わせた人物達が、近くにある椅子へ腰を下ろしていく。アンナにリィ。フラウクラウにチェル。シン、ジェニー、そして、上記までに説明していない、エルヴァーン族の初老の男性と、ヒューム族の女性。
 エルヴァーン族の名はデスパシエール。サンドリアとタブナジアの間を行き来して、生計を立てている商人である。
 ヒューム族の名はロウソウ。薄金シリーズを纏う彼女は、義父であるガーラシオンが指揮する小隊の副長である。毛髪は、せせらぎのようにするりと伸びる長髪。頭頂部でゴムによって結っている。その色彩は黒。夜の闇を思わせる深い黒だ。銀燭を放つ鉢巻の上を垂れる前髪の下、落とす彼女の面持ちは消沈していた。上記のエルヴァーン族の少女のようだ。魂が抜取られてしまった如く伽藍としている。椅子には行かずに、その場へまるで人形のように腰を下ろしていた。
 椅子に座るまでの道程で、視界に入った彼女の様子へ、ジェニーの表情が曇る。その理由を想定する事が出来るからだ。
「オーク軍の執拗な侵略と、謎の光によりアルテドール候、そしてその護衛に当たっていたガーラシオン殿の消息が絶たれた。ロシフォーニュ様も行方が不明。ルシアと巫女様も連絡が取れない。それに――」
「ああ、イブキも死んだ」
 シンが表情をはっと震わせた頃には遅かった。やや低調なジェニーの声が漏れる。周囲の表情も、うっすらと伸びて来た雲へ陰る。イブキというのは彼女の小隊の副長である。信頼しあった良いパートナーであった。
 今度は、ジェニーが表情筋を震わせる。困惑した風に笑いを零し、開口した。
「ああ、すまない。いや、変に気を使われるよりはよっぽどましさ。それに一人、生存者を発見出来た。たった一人ばかしであったかもしれないが、私にとっても、多分あいつらにとっても、これ以上とない希望だと思うんだ」
 そんな事、誰にも判りやしない。やはり、エゴだよな――。内心で自嘲を吐く。この場に居る者は、彼女の性分を熟知しているつもりだ。思慮深く、誠実。仲間の事情には、どこまでも親身なくせに、自身の事情となると、一人で思案してしまう。
 「話を続けてくれ」とジェニー。シンが口を開いたのは、僅かな沈黙を置いた後であった。表情へ伸びた雲の名残を残したまま、笑みを小さく象る。
「・・・・・・あ、ああ。まずは指導者が必要であると思う。それで俺は、デスパシエールさんにお願いしたいと思う。年長者であるし、国民からの信望も厚い。良き指導者になれると思うのだが、どうだろう?」
「っ?!」
 シンが、デスパシエールへ顔を移行して提案する。当人の方は想像もしていなかったのであろう。目を点にして、提案したシンの顔を呆然と見詰めている。
「うん、うん! デスパシエールじいちゃんなら賛成!!」
「私も良いと思います」
 いの一番に賛成の声をあげたのは、明朗なリィの声であった。それに続き、副長のアンナも賛同する。結局異議は挙がらず、最後の確認に、シンが「よろしいでしょうか」と尋ねる。デスパシエールが、薄くなった頭を照れくさそうに掻きながら零した。
「で、では・・・・・・。私なぞで務まるものか不安ですが、お受け致したいと思います」
「有難うございます。それでは早速皆にこの事を伝えよう。それに、亡くなった者達を弔わなければ」
 シンは、一つ大きく頷きながら、デスパシエールへ手を差し伸べた。後頭部へ腕を置いたまま、余した腕で、そろそろとそれを掴むデスパシエール。それを切欠に、皆がデスパシエールへと腕を差し出す。ある者は彼に歩み寄り、ある者は前傾に身体を乗り出して。その度にデスパシエールは、変調せずに握手を交わしていた――と。
「なぜ・・・・・・」
 後方から言葉が漏れた。それはまるで、ガス漏れのように弱々しく、語気のない声色だ。皆が、声の方向へ視線を泳がす。先程まで、一挙一動せずに消沈していたロウソウが、のっそりと腰を持ち上げていた。毛髪と同色の深い黒をした瞳は、まるで幽鬼のようである。朧で、焦点が曖昧だ。凍結した風に、空間が沈黙する。
「よかった、よかった! ロウソウも元気になったみたいだね!」
 その最中で、リィは、笑顔を浮かべて彼女へ一歩差し出しす。
「リーダー!」
 そんな彼女を制したのはアンナであった。強い語気で呼ばれ、立ち止まるリィ。「ん?」と不思議そうに振り返るのと、ロウソウが、再度開口したのはほぼ同時であった。
「なぜ、どの国も救援に訪れてくれなかったの・・・・・・?」
 ふらり、ふらり。今にも崩落しそうな歩調で歩み出すロウソウ。語調もまた、それへ倣ったように危うい。その深淵は、誰へ向けられているともつかなかった。彼女の話は続く。
「ウィンダスや、バストゥーク。それにサンドリアや、ジュノまでも! あんなに救援信号を送信したというのに、どの国も見向きもしてくれなかった!!」
 ロウソウの語気が、昇段していくように高騰していった。怨憎。悔恨。悲哀。その他にも、まだあるのかもしれない。一段上がるごとに、その不安定な心身へ背負っていく。その行く末は、ある人物の元。呆然と席に着くデスパシエールであった。
 ロウソウの足が止まる。ハア、ハア、ハア。ゆっくりと。だが、情感を絡めた息遣いだけが、その場に漏れていた。誰も彼女へ声をかけるものはいない。幽鬼の深淵が、じいっとデスパシエールを覗いていた。その腕が静かに伸びて、彼の襟を掴む。「ひい」と、デスパシエールが、咄嗟に言葉を上擦らせる。
「あなた、何か知っているんじゃないの?」
「ロウソウ・・・・・・」
 凍結した時間を渡ったのは、一つの風。哀切に彩られた、シンの言葉。しかし、背負った怨念へ憑依された彼女の耳に、その優しい風は届かない。
「ねえ、教えてよ・・・・・・。なぜアルテドール侯は死ななければならなかったの? なぜ皆死ななければならなかったの? 父さんはなぜ――!?」
「ロウソウ!」
 二度目の風は嵐。幽鬼の背負った怨念を吹き飛ばす一喝であった。その主はジェニー。彼女の深く黒い“深淵”が、ロウソウの朧に濁る“深淵”を射している。はっと表情筋を震わせるロウソウ。その双眸には涙が浮かんでいた。反射的にデスパシエールを解放する。再度ぽつり、ぽつり、と静かに歩き出す。彼女の表情は、再度消沈していた。
「ごめんなさい。少し、風に当たってくる・・・・・・」
 抑揚の損失した声色で、服を脱ぐように言葉を置いていく。ついに、それ以上開口する事無く、彼女はその場から姿を消した。
 ジェニーの顔が、僅かに落ちている。ぐうっと噤む口元。切歯扼腕し、情感の漏出を抑制している。その情感達は、双眸を拠所にしたようだ。彼女の最中に存在するありとあらゆる感情が、渦を巻き、絡み合っていた。
 ロウソウの様相を目の当たりにしながら、ずっと思考していた。自身が遭遇したエルヴァーン族の少女のことを。最愛の父を亡くし、消沈するその姿に。ふらり、ふらりと歩を進めるその姿に。そして、心内の感情が全て抜取られてしまったような、伽藍としたその表情へ。少女も先程の彼女のように、激昂するのではないだろうか。復讐心へ絡み取られ、我を忘れて、破滅的な思考に支配される。そう思うとぞっとした。恐ろしくて、堪らない思いがした。だから、気付いたら、叫んでしまったのだ――――。
 ジェニーが、自己嫌悪という闇に食われている様を知覚したのであろうか。開口したシンから漏れたのは、暗んだ調子の声色であった。
「今日は、ここまでにしよう。その後の事は、枢機卿殿が戻って来てから、また・・・・・・」
 返事をしたのはリィだけであった。寂しげに「うん」と。とぼとぼと歩き出す者。静かに席を立つ者。沈痛な面持ちで、その場に立ち尽くす者。タブナジア。喪失した悲しみは、容易には消失しない――。

----------a scene D

 その頃、ミルドリオンはフォミュナ水道を一人で歩いていた。穏やかな様子は無く、前方を見据えている。土地柄からしても、どうやら気分晴らしの散歩というわけでは無さそうだ――と。如何程歩いていたのだろう。彼の足が止まった。双眸を僅かに睇視する。
 前方より歩いてくる二つの人影へ、じっと瞳を据えている。ヒューム族の少年と、ミスラ族。ミスラ族の方は、この能力を抑制する結界の最中で、バイソン装束を纏い、悠然としている。ヒューム族の少年の方も、纏っているのはチュニック。決して足を立ち入れる事の出来る“成り”ではない。ミルドリオンが沈然と口を開く。
「何者ですか?」
 それへ、ミスラ族が悠然と笑みを湛えたまま応えた。
「巡礼者ですよ。祈りを捧げに来たのです」
 「ほお」と口元へ含みを有すミルドリオン。これはまた面白い事を言う。細めた瞳は、僅かに愉快そうですらあった。開口する。
「あなた方の神は、信者へ魔晶石を埋め込めと導くのですか?」
 ミスラ族の口角が、引き上げられたように、ゆっくりと皺を深める。隣のヒューム族の少年へ瞳を落とした。
「クレイオール、この人」
「ああ、馬鹿な盲信家ではないみたいだね。ローラ、彼の心が読めるかい?」
 クレイオールと呼ばれたヒューム族の少年は、ミスラ族――ローラへ振り向きもせずに応えた。その双眸は、真っ直ぐミルドリオンへ。質問を返されたローラは、ミルドリオンの双眸を三拍程眺める。応えは否。首をゆったりと往復させた。表情は変調していない。クレイオールが再度開口した。
「君は先に行っておいで――。どうせハラペコなのだろうし」
「あら、失礼な。それではまるで、私が獣みたいじゃあありま――」
 言葉の内容とは裏腹に、変調せずに言葉を返すローラ――と。言葉を停止して、双眸を再度前方の枢機卿へと向けた。刹那――。
 二人を炎が飲み込む。かの真龍族の豪腕を思わせる猛炎。ゴオウという唸り声をあげて、二人の愚者へ、その脅威を遺憾なく露呈する。
 残痕を引き摺りながら還り立つ精霊達の化身。クレイオールにダメージは窺えない。それどころか、顔色一つ変えていない。ただ、服装はチュニックよりゴリアードイサオへと変化していた。傍らにあったローラの姿が無い――と。
 クレイオールの眉間の寸前に、短躯の刀身が突き立てられた。魔法を放った次の瞬間に弾けていたミルドリオン。彼もまた、バーニーを装着している。腰元へ佩帯していたその凶刃は、既(すんで)の所で、彼の魔力による防壁によって防がれていた。狩人と得物。刃と躯。顔と顔。不可視の、しかし絶対的な壁が一枚、その狭間に聳立している。拮抗する両者。しかし、クレイオールに変調はやはり認められない。消耗しているのはミルドリオンの方だ。クレイオールが口を開く。
「やはり、心が読めないというのは少々やりにくいなあ」
 そんな様子どこにも無いではないか。心内で吐き捨てるミルドリオン。眼前の奇妙な少年へ集中力を残したまま、その傍らで別の思考を回転させる。あのミスラ族は行ってしまったのか。声が既に聞こえない。あの異常な渇望。“あの娘”を探してここまで来たのであれば、放ってはおけない――。それにこの少年も心を露わにしない。心が読めないとか言っていたが、まさか――。
 ミルドリオンが口を開いた。
「もう一度問いましょう。あなた方は何者ですか? ここへ何をしに来たのです」
「巡礼ですよ」
「申し訳ありませんが、お引取り頂きたい。生憎――」
 クレイオールの思考の最中へ、針穴程の微かな違和感が孕んだ。自身へ懸かる力が僅かに弱まる。眼前のヒューム族の口元が、小さく笑んでいることにそこで気付いた。
「我々に男神を崇拝する習わしはないのでね」
 地面へ巨大な方陣が浮かんだ。クリスタルの光輝に似た淡い輝きが、ふわり、ふわりと舞い昇る。クレイオールの口元から、笑みが姿を消していた。次第に、それはその明度を増幅させ、白い闇へと化体する。やはり心が読めないというのは勝手が違う。クレイオールは思考して、再度小さく笑んだ。それがどういった意味を含むものなのかは判らない。眼前のヒューム族は、感情を喪失してしまった風に虚ろな様相で、ただ立立ち尽くしている。そして闇は、二つの躯を喰らった――――。

----------a scene E-a

 場面はタブナジアへ戻る。戦後であろうと宗教は死なない。襲来する獣人を掻い潜って、持ち込めた物は少数ではあったが、それだけでも、彼らにとっては十分であるようだ。粗末な木箱の上に、小さな女神像が奉られている。その老朽を始め、くたびれた様子の女神へ、数多の人間が膝を折り、祈りを捧げている。
 その様子を遠目から窺う二つの人影があった。一人はエルヴァーン族の少女。一人はヒューム族の青年。
 エルヴァーン族の少女は、その出で立ちから神学士であることが窺える。エルヴァーン族に例外ない褐色の肌に、毛髪は藤色。胸元へ藍石のような深い青色をした宝石をぶら提げている。可憐な顔立は、何と無く群集を向いていた。名をプリッシュ。
 ヒューム族の青年は、バローネ装束を纏っていることから、手練れの戦士である事が窺える。ヒューム族には珍しい褐色じみた肌の色。オールバックにして、首の辺りで結髪にした毛髪は、僅かに茶味を帯びた黒色のドレッドヘアーだ。仏頂面で表情を読み取りにくいが、ガルカ族にも劣らない、厳然とした雰囲気を有している。双眸の下と、額から眉間にかけて、血と似た赤い色彩をしたペイントを施していた。彼もまた、前方の群集を何と無く見詰めていた。名をジャスティニアス。
 ジャスティニアスが、傍らのエルヴァーン族の少女へ瞳を落とす。が、口を開いたのは彼女の方であった。
「枢機卿殿が心配か? だろ?」
 ジャスティニアスは、表情をはっとさせる。視線を戻すと「ああ」と応えた。表情は戻っている。プリッシュが、表情をうんざりとさせて口を開いた。
「ずっと同じ事考えていたな。20分も」
 「ああ」と再度ジャスティニアス。プリッシュは溜息をついた。
「大丈夫だよ。ここで大人しくしているさ」
「意外だな――」
「あん?」
 ジャスティニアスが、プリッシュへ向かずに言葉を零す。一方のプリッシュは苛立ちを隠しもせずに、言葉の主へ向いた。言葉を続けるジャスティニアス。その口角には小さく笑みが咲いていた。
「お前の事だから、暴れ出してでも枢機卿殿へついて行くものだと思っていたのだが・・・・・・」
「ああ! そういうの“せくしゃるはらすめんと”って言うんだぞ!! 麗しき乙女に向かってなんて事を! 名誉毀損だ!」
 信じられないといった風に表情を引きつらせるプリッシュ。身体を仰け反らせ、ジャスティニアスへ指を突き刺した。当のジャスティニアスは呆れ顔だ。麗しき乙女。まさか、彼女からそのような言葉を聞く日がこようとは。「世界の終わり」はやはり近いのだろうか。
「枢機卿様を信じているから、でしょう?」
 二人が声の方へ顔を向ける。エルヴァーン族の少女が一人、二人の元へ歩み寄っていた。鮮やかな橙色をした、肩までかかる長髪。同色の眉の下には、黒真珠のように、美麗な光明を湛えた双眸がある。清楚な顔立ちは、実年齢より少し大人びて見えた。彼女の名はウルミア。タブナジア聖歌隊で最も美しく歌う事が出来ると評判の少女である。
 彼女の発言へ、一瞬だがたじろぐプリッシュ。目を逸らす。このおてんばも、彼女の前ではただの少女というわけだ。ジャスティニアスの口角が、再度小さく笑んだ。
「何しに来たんだよ。お前みたいな“優等生”が俺みたいなのと話しているのを見られたら叱られるだろ」
 プリッシュの視線は、まだウルミアには向いていない。ウルミアは穏やかな笑みを口元へ湛えたまま返す。
「あら、そんな事無いわ。あなたは、枢機卿様や、ジャスティニアスさんと一緒に身を呈して私達を守ってくれたじゃない。皆、少しずつだけれど、あなたのことを受け入れようとしているわ」
 プリッシュが、落としていた視線をウルミアへ移す。彼女の様子へ変調は無い。二泊程見据えて、再度落とした。ウルミアが、手を差し出しながら口を開く。
「さあ、行きま――」
「ウルミア、いますか。ウルミア」
 彼女の言葉を女性の声が遮った。群集の方からだ。ウルミアが、はっと表情筋を震わせる。
「行けよ――」
 プリッシュが、ウルミアから視線を逸らしたまま零した。一瞬寂しそうに表情を曇らせるウルミア。「ええ、また」口元へ笑みを象って、振り返る。群集へ駆け寄るウルミアを、ついにプリッシュは見送らなかった。
「俺は、ウルミアの意見は正しい様に思うがな」
 口を開いたのはジャスティニアスであった。プリッシュの眉間が、僅かに皺む。視線は、依然落ちたままだ。
「あいつ、一番泣き虫のくせに、一番頑張っている。緊張して歌えなかった程度で世界の終わりだなんて思ってたやつが、今じゃ皆へ希望を与えている。ミルドリオン様がいなければ、俺はただの「異端児」だ。皆へ余計な不安を撒き散らすだけの存在だろう・・・・・・」
「――すまん」
 五拍程の沈黙。その後に零れた隣人の言葉へ、プリッシュが驚愕した風に振り返った。ジャスティニアスが、側頭部を右腕でぽりぽりとなでている。プリッシュは、弾ける風に口を開く。
「馬鹿! 勘違いするなよな!! 俺はお前らとは違うんだ。“寂しく”なんかないぞ!! ただ思った事を言っただけだ!」
「――そうだな」
 再度僅かな間を置いて応えるジャスティニアス。やはりその口元には小さな笑み。しかし、プリッシュには癪に障るらしい。再度ジャスティニアスへ指を突き立てる。今度は前のめり。
「うわ! なんだよ! その態度!! 本当だぞ!!」
 プリッシュ。今お前が感じていたそれを、我々は“寂しい”と呼んでいるんだ。
 ジャスティニアスは、プリッシュの様相を眺めながら思考していた。
 今もお前は私の心を読むことを忘れてそんなに必死になっているではないか。喜び、怒り、哀しみ、楽しむことだって知っている。他の少女と何一つ変わりやしない。なのに、神よ。なぜ、あなたは彼女にかくも苛烈な運命を――――。
 プリッシュの方はと言えば、依然なにやらがなり立てているようだ。そんなジャスティニアスの気も知らずに。
「おい! 聞いてるのか!!」
「あ、ああ」
 その一言でジャスティニアスは、心内より引き戻された。慌てて返事を返す。プリッシュは、覗き込むように、じいっとジャスティニアスの双眸を見詰めていた。顔を落として、再度表情をうんざりとさせる。溜息を目一杯に吐き捨てた。
「少し散歩に出てくる・・・・・・。いいだろ?」
「わかった」
 ジャスティニアスの低調な返事を、顔を落としたまま聞いて、プリッシュはこの場を後にした――――。

----------a scene E-b

 まさか、ジャスティニアスにまでおちょくられるだなんて、一生の不覚――!! 後で、びしいっとお仕置しないとな。
 心内で吐き捨てるプリッシュ。その表情は冴えない。彼女は、祭壇を抜けた後、ルフェーゼ野へ向かって行方を伸ばしていた。
 それにしても――。プリッシュの眉間が僅かに皺む。歩きながら思考していた。
 戦争というものは、これ程に多くの声を産み落とすのか。どこを歩いていても声、声、声。悲嘆と憎悪で満ちている。“心”というものは、つくづく煩わしく、厄介な品物だ――。
「ん?」
 左右に開く四つの口。左に曲がればミザレオ海岸が、右に曲がればルフェーゼ野が姿を現す。彼女がその“声”を聞き取ったのは右方――ルフェーゼ野からであった。
 深奥でありながら苛烈。悲嘆と憎悪が、同時に居座っている。不安定で、奈落の底より漏れる心底の呻き声。こんなものを、先程も聞いた覚えがあった。確か、祭壇。隅で人形みたいに塞ぎこんでいたエルヴァーン族の少女だ。彼女達のように、いつ闇へ侵蝕されてもおかしくないような人間も少なくは無い。「元のように」というのはやはりどう足掻いても無理なのかもしれない。昨日までいた隣人がいないのだから―――と。

(プリッシュ、プリッシュ―――)

 プリッシュの表情が弾けた。心内へ声が渡る。それは弱々しく、先程の老朽した女神像のように、箇所で語気を変調させながら。
 そして、何より彼女を驚愕させたのは、声の主だ。よく知っている。間違いない、ミルドリオン様のものだ。プリッシュはその場に立ち尽くしていた。表情に変化は無い。再度声が、彼女の心内へ渡った。
(聞こえますか、プリッシュ。アミュレットへ、触れて、精神を、集中して下さい)
 プリッシュは言われるままに、胸元へぶら下る“石”を包み込み、瞑目した。暗転した視界の最中に淡い光が現れる。それは最初、ごく小さな点でしかなかったが、徐々に化体していく。やがて、その姿は裸体のヒューム族の青年を象った。クリスタルの光輝を全身へ浴びたように、淡彩な蛍光へ包まれた青年。プリッシュが歓喜の声をあげた。
「ミルドリオン様!」
 それが、実際の言葉なのか、思考なのか、彼女にすら判断出来ていない。だが、そんな事はどうでも良かった。待ち人が目の前に居る。
(プリッシュ、良かった。まだ、無事の、ようですね――。時間が、ありません。一度しか、言わないので、よく、聞いて下さい)
 彼から感情という概念は、損失していた。瞑目し、眠りについたように、晏然とした表情。声色にも抑揚を感じられない。プリッシュの返答を待たずに、ミルドリオンが続ける。
(タブナジアへ、危機が、迫ろうと、しています。恐ろしく、大きな闇が、皆を、飲み込もうと、しています。私は、躯を、失ってしまいました。今や、このような手段でしか、交信も、出来ません――)
「ミルドリオン様! どういうことだよ! それじゃ、判らない!!」
(プリッシュ。ごめんなさい、プリッシュ。貴女の、人生を、奪った、私が、貴女へ、このような、頼み事を、する事は、とても、傲慢で、ある事は、判って、います――)
「ミルドリオン様!!」
(しかし、この街を、守る事が、出来るのは、貴女だけしか、いません。友と、仲間と、皆と、協力しなさい)
 そんな、無理だ。ミルドリオン様。私は――。“声”には乗せずに呟くプリッシュ。俯くその表情には、いつの間にか不安が陰を落としている。
(貴女は、繋がる、手段を、持って、います。ウルミア、や、ジャスティニアス、と、繋がる、事が、出来た、ように、もっと、多くの、人々と、繋がる事も、可能な、はず、です――)
 彼は、彼女の心内を、読むことが出来るのであろうか。瞬間ではあるが、その口元が微笑んだように思える。穏やかに、優しく。父のように。兄のように。だが、俯く彼女に、彼の変化を知覚する事なぞ出来るはずもない。無理だ。あいつらの心は、私に向いていない。
(もう、時間が、無い、みたい、です――。最後に、あなたに、伝えたい、事が――)
 プリッシュの顔がミルドリオンへ弾けた。その顔には、“呼び方”を忘れてしまった感情で塗潰されている。その名は不安。人間が当然のように抱える感情の一つだ。
(私、も、シーナ、も、消滅、した訳、では、ありま、せん――。しばしの、お別れ、と、なるで、しょう、が、私達、は、「心の絆」で、結ば、れてい、ます――。また、いつか、出会う、事が、出来る、でしょう――。姿、形、は、違え、ど、きっと、また、出会う、事が――。だから、どうか、自分が、一人ぼっち、だ、なんて、思わ、ない、で、下さ――。どう、か、あな――へ、女神様――、ご、加護――――)
 青年の姿が消える。柔らかく、静かに。精霊が空へ還り立つようであった。プリッシュの視界が、再度暗転していた。薄っすらと、ゆっくりと双眸を開いていく。そこには、先程までと変わらない、タブナジア地下壕の姿がある。諸手で包み込んでいた“石”から、そっと手を放す。幾程の時間を、自身は瞑目していたのだろう。意識へ薄く靄が棚引いている。覚醒しきっていない意識の最中で、彼女は自身の声を聞いていた。
 何だったのであろう。今のは。あの、胸で騒いでたものは何だ。あれが、虚ろか? 随分前に、喪失してしまった――。虚ろ? 今、虚ろと――? 馬鹿な。今の俺に、そんなものはもうない。そうでなければいけないんだ。俺は、闇を宿してはいけない。それより――。
 ミルドリオン様の言い付けを守ろう。プリッシュの表情へ鼓動が蘇る。扼腕。ぐっと、拳骨を緊束すると、プリッシュは駆け出した。右方、ルフェーゼ野である――。

----------a scene E-b

 その美麗な景観でも知られるルフェーゼ野。プリッシュは、ラフェール川の上に架けられた吊り橋に、ヒューム族である女性の姿を認めた。薄金シリーズを纏う、黒い長髪。ロウソウである。声はあいつからか。駆け寄るプリッシュ。揺れる吊り橋にも動揺した様子を見せずに、ロウソウは、眼下のラフェール川を眺めていた。プリッシュは、彼女と幾らか距離を置いた所で足を停止する。叫び声を挙げた。
「おい! なあ! お前、近衛騎士団だろ!? 仲間に伝えて欲しい事があるんだ!」
 ロウソウに反応する気配ない。プリッシュは苛立ちを露わにして、再度声を挙げる。
「確かにお父さん亡くしちまって悲しいかもしれないけど!」
 ロウソウの表情筋が、ひくっと震えた。のっそりと叫び声を挙げる人物の方へ双眸を引き摺る。プリッシュの話はその間も続いていた。
「お前、何のために騎士団に入ったんだよ!! 皆を守りたいからじゃないのか!?」
 この少女、私の心を読んでいるの・・・・・・? 唖然とこちら見遣る女性の声が、心の中に渡り、一瞬たじろぐプリッシュ。固唾を飲み込む程の間を置いて、再度口を開いた。先程より語気は強くない。
「ああ。お前の泣き声、ずっと聞こえていた。不安や、悲嘆や、憎悪が、どれも無茶苦茶にぶつかり合って、何だかすごく痛そうだ――」
 女性の表情が、ひくと恐怖に引きつる。心内に抱える様々な概念を見透かされるのが、酷く恐怖であるように感じた。確か、この子――。
 プリッシュの表情へ変化がおこる。泣き顔とも、顰めっ面とも取れない面持ち。やっぱり、私には――。彼女は何に涙し、何に憤怒しているのであろう。僅かな沈黙を置いて、口を開いたのはプリッシュであった。
「ともかく、聞いてくれ――。タブナジアへ良くない物が来ようとしているんだ」
 真っ直ぐ自身を貫く双眸。ロウソウの表情は変調しない。
「お前だって、本当は、判っているんだ――。それを判ってしまう事は、凄く恐ろしい事なのかもしれないけど、そんな事は無いんだ――。知らないと先に進めない事だってあるだろ!? 仲間に伝えてくれ。不審な奴が訪れても、絶対に中にいれちゃあいけないって」
 「じゃあ、頼んだからな!!」と付言して、少女は振り返る。そのまま走り去ってしまった。少女が、完全に自身の前から姿を消し去っても、ロウソウの心内にはその姿が焼き付いてた。少女の表情。言葉。何度も、何度も、循環する。元々居座っていた概念達と相俟って、彼女の心内は激しく回転していた。再度、ラフェール川へ視線を落とす。その双眸から、涙が一粒零れ落ちた――――。

----------a scene E-d

 ルフェーゼ野を抜けたプリッシュは、祭壇に向けて力走していた。同一の服を纏った一群が見える。プリッシュは、四肢を叱咤して更に加速した。やがて、一群から少し距離を置いた位置にいるジャスティニアスの元へ辿り着く。ジャスティニアスは、短息を吐き出す隣人へ瞳を落とした。
「お帰り」
「ジャスティニ、アス。至急、門番へ、伝えて、くれ――」
 否を無しに紛れ込んでくる短息へ調子を乱しながら、プリッシュが、訥々と零していく。ジャスティニアスが、不思議そうに顔を緩めた。ジャスティニアスが開口しようとしたのと、プリッシュが開口したのはほぼ同時であった。
「どう――」
「いいから行け!!」
「あ、ああ・・・・・・」
 珍しいな。焦っているのか。プリッシュへ瞳を置いたまま、ジャスティニアスが踵を返す。
「それで、何て――?」
「今から、一切、不審人物は、タブナジアへ――」
「あら、プリッシュ、戻っていたのね。丁度よかった」
 プリッシュの言葉を遮ったのは、彼女が良く知る声であった。前方から歩み寄る陰を、呆然と見詰めるプリッシュ。そんなプリッシュを不思議そうに見詰めるジャスティニアス。シスターの一人、ウルミア、そして見知らぬミスラ族が、彼女達の方へと歩み寄っていた――。

----------a scene E-e

 ルフェーゼ野の吊り橋の上を、とぼとぼと歩むロウソウ。その表情へ、鼓動は蘇っていない。依然人形のように虚ろだ。そんな彼女へ言葉を掛ける者がいた。
「あっ、あっ! ここにいたんだ! ロウソウ!!」
 明朗な声色。リィだ。ロウソウが、ゆっくりと顔を上げる。リィは、満面の笑みを表情へ咲かせたまま彼女へ歩み寄っていた。やがて距離が縮まり、二人の足が止まる。
「さっきは、ごめんね! リィ“しりょ”が足らなかったよ」
 少し寂しげな表情で言葉するリィ。ロウソウは、口元へ笑みを象って言葉を漏らす。
「いいえ、貴女は悪くありません。私のことを気遣って言葉をかけてくれたんですもの・・・・・・」
 リィの表情へ、ぱあと笑顔が咲く。やがてそれは満面に彩り、太陽のように輝いた。
「よかった! 今度こそ、本当にロウソウ、少し元気が出たみたいだ!!」
 ロウソウが表情をはっと震わせた。元気――? そうか、私、一歩を踏み出せたのかな。ロウソウが双眸を細める。薄っすらと。柔らかく。穏やかに。まるで、吹き通る微風の如く。そんな、ロウソウの思考を、リィの明朗な声色が引き戻した。
「それより、それより、知ってる?! 新しい枢機卿様が来ているらしいよ!」
「えっ・・・・・・?」
 ロウソウの表情が、再度はっと震える。先程訪れた少女の言葉を思い出していた。
『タブナジアへ良くない物が来ようとしているんだ――』
『――不審な奴が訪れても、絶対に中にいれちゃあいけないって』
 ロウソウの心内が、常闇に閉塞されてゆく。その最中も、リィの言葉は続いていた。
「でね、でね! 会いに行ってみようよ! ロウソウも少し元気になったみたいだし! もっと、もっと気分が晴れるかもしれないし!」
 ロウソウに返事をする様子は無い。リィの表情が、不思議そうに変化する。
「ロウソウ?」
「あ、ごめんなさい・・・・・・」
 再度、にかあと満面へ笑みを咲かせるリィ。
「さあ、さあ! 行こう!」
「ええ・・・・・・」
 振り返り、歩みだすリィ。ロウソウがそれに続く。「楽しみだねえ――」リィは話を続けていた。しかし、ロウソウの心は、思考の最中にある。まだ、彼女の言っっていた“それ”とは限らない。でも、もし、もしもそうだとしたら――――。やや俯き加減に落とした顔。ロウソウはその最中で口元を噤んでいた。彷徨う“心”がここに一つ――――。

----------a scene E-d

 場面は祭壇へ戻る。ウルミアと並んで歩く見知らぬミスラ族。身に纏うのはバイソン装束。形容しがたい白色の毛髪。そして――。
 プリッシュの指の先が震えている。その名称を知らない彼女は、それに気付かない。彼女へ瞳を置いていたジャスティニアスにも、その変化は余りにも僅少で、認識出来なかった。プリッシュは、その女性の双眸に引き込まれていた。ムーンストーンのように色彩を有さない透明な瞳。その瞳の先に宿る、膨大な闇を。魔晶石――? そんな、なんで。じゃあ、こいつが――。
「プリッシュ、聞いている?」
 ウルミアの声が、プリッシュの思考を割いた。はっと表情を震わせて、ウルミアへ顔を向けるプリッシュ。ウルミアの表情が僅かだが不安に陰る。
「どうしたの、プリッシュ? 調子が悪いの・・・・・・?」
「い、いや、違う。大丈夫だ・・・・・・」
 プリッシュが口元へ笑みを象った。いつもと様子の違うプリッシュへ、ウルミアは首を傾げる。プリッシュがミスラ族へ、顔を移行しながら口を開いた。
「それで、何だって?」
「もお、やっぱり。枢機卿様が、サンドリア大聖教の高僧様方と一緒に戦争の跡地へ巡礼をするから、その留守の間枢機卿様のご推薦でサンドリアからいらっしゃった新しい枢機卿のローラ様よ」
「宜しくお願いいたします」
 穏やかな笑顔。優しい声色。嘘だ。全部、嘘だ。ただ、ここで俺が「こいつは偽者だ!」って叫んでどうなる――? 皆、聞いてくれるか? 俺の言葉を――。
 ローラが差し出した腕へ、プリッシュは手を伸ばさない。依然その指先は小さく震えている。ウルミアの表情が苛立ちを湛えた。否、そう表現するのは語弊かもしれない。彼女の表情は、まるで子供を叱り付ける母親のそれだ。
「もお、プリッシュったら」
 ローラを見上げるウルミア。困惑した風な面持ちへ、小さく笑みを浮かべている。
「ごめんなさい、この娘、少し照れ屋なんです。でも凄くいい子なんですよ――」
「どうやら、そのようですね。それじゃあ、次の場所を案内して頂けるかしら?」
「はい」
 ウルミアへ顔を向けて応えるローラ。その様子へ変調は窺えない。ウルミアの表情から困惑が抜けた。振り返り、歩き出す。それに続いてローラも振り返る。ウルミアの後に続いた。そっと、腕をまわし、肩へ乗せる。そのまま二人は、プリッシュ達の元を歩み去ってしまった。
 側頭部をぽりぽりと撫でながら、隣人の様子を見守るジャスティニアス。彼女は瞭然とした苛立ちを湛えていた。薄っすらと開いた瞳。僅かに皺む眉。そして薄弱と結ぶ口元。戦争の影響であろうか。動揺した様子が以前よりも多いように思える。
「ジャスティニアス・・・・・・」
「ん?」
 地響きのような低い呻き声に、ジャスティニアスは、背筋へ悪寒を感じる。
「一発蹴らせろ」
「はっ?」
 ごおぅん。形容しがたい轟音が、地下壕へ爆ぜる。そこには、膝を折りながら悶絶するジャスティニアスと、そして、どすどすと勇ましく行進するプリッシュ。
「な、なんだってんだ・・・・・・」
 そう問われれば八つ当たりだとしか、返答のしようもないが、今の彼女に自覚は無い。ここにもまた、彷徨う“心”が一つ。この、タブナジア地下壕を彷徨う数多の心達。その一つ一つに、闇が忍び寄ろうとしていた――――。


Page 8
―地下壕の群集― -The dark that steals up to the Tavnazian Safehold -


投稿日時:2007-07-22 03:55:47
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[004] 感謝感激。
投稿者:JR(名取) 投稿数:96

さそさん、Banditさん、感想記事の投稿有難う御座いました^^ 本日リアルで用事がありまして、帰って来た時に当掲示板を開いて、自身の目を疑う程嬉しかったです。お早い時間から、お二人の方に読んで頂き、凄く光栄でした。有難う御座いました^^

>さそさん
 くはっ、実はプリッシュを書くに伴い、彼との絡ませ方に非常に苦労しました。最初に書いている時に寡黙でガルカっぽいキャラクターを描こうとしていたのですが、公式HPの人物紹介と3悪童を叱り付けている姿を思い出して、少しずつ噛み砕いていって挙句あのオチだったのですが、さそさんのお気に入りのキャラクターだったのですね^^ では更にきついお仕置でおもてなしせねば――(おい;) プリッシュやウルミア等の若い世代の親父みたいに描ければいいな、と思っていたのでお褒めの言葉を頂けて非常にうれしいです^^
 どうにもサンドリア然とした(他国もそうですが)お堅くて厳かな会議やれ、挨拶やれの描写は苦手でして、ついついやりやすい方向へ逃げてしまいます。フランクランは完全になめられていますね^^; 最初はチェルのキャラクターを違う風にしようかとも考えたのですが、折角『名も亡き』なのだからキャラがあった方がいいよなあと考察して今に至りました。フランクランの方もやさくれ樽なので物語のような会話が、彼らが絡めばこういうシーンが多くなりそうです^^;
 会議の方は上記の通り、厳かな感じの会議然たる描写が苦手なのでどうしても心理描写に頼ってしまいました; 俺としてはさそさんの描く人間臭いクリルラ女史に酷く感銘を受けたわけで。勉強させて頂いてます^^ これからぐいぐい虚脱と闇に侵されてゆきます^^; その中でもがく人々の様子を上手に描けたらいいなあと、思いつつ精進してゆきたいと思います^^

>Banditさん
 くは、ここにも実在MPCファンの方が!(こら;)
 ウルミアはこれからローラや、プリッシュが多くなると思います。後出来たらエルヴァーン族の少女との絡みも少々(出来たらってなんだ;) 特にローラとの絡みではこの怪しいミスランへ大人の時間をねちねちごそごそと――(やめい;) とにかくローラおばさんへ汚されていく予定です(何だ、そりゃ;) あとがきで書いた某用語辞典サイトによりますと、何でもウルミア嬢の手を腰の前で組んで首を少し傾げる姿が萌え度が高いとの事で、この『濃いぃ作品フェチの皆様に捧げるレクイエム』をコンセプトと掲げる『名も亡き』としては是非ともどこかで使用せねばと思っている所存です。最終目標は冥土さんの格好で「お帰りなさいませ、ご主人様」と、上記の姿勢で言っている姿を想像して頂けるまでに――(フェードアウト【失礼致しました】;)
 ローラも気に入って頂けたようで、光栄です^^
 清楚な顔立ちの裏にどす黒い腹を抱えたというベタっちゃあベタなキャラクターですが、正にそのままです、はい^^; 彼女にはこの先、どっぷりと艶女(アデーニョ【死語】)っぷりを発揮してもらい、怪しくねちねちとタブナジアを堕としていってもらいます^^;
 確か過去ログからの作品で軍の人間を扱うような作品は無かったかもしれませんね^^; 今までの中でも多分極僅かだけしか; その理由として策略的なものが大の苦手なわけで^^; 今回はそこいらの描写が無かったので――というよりもほとんど集団会話のゆうなものだったので、まだ書きやすかったのかもしれません^^;
 ミルドリオンとクレイオールの対決は人間離れした二人の戦闘シーンということで壮麗なもを描けたらなあと思っていたのですが、未熟; 地味やっつうねん; しかし、お褒めの言葉を頂けて凄く嬉しいです^^ がっつり謎だらけですねw; いつもの悪い癖でやり逃げ、後出しジャンケンでこの謎が無駄にならなければいいのですが^^;(既に不安;)
 くはあ、やはり暴れ足りませんねプリッシュ!!;; シャントット博士といい、プリッシュといい、どうもキャラクターへブレーキをかけてしまう^^; かくなる上は、これからは神学士の格好ではなくさらし姿で――――(以後自己規制【失礼致しました】;)

 そして「〜へ」という言い回しの件についてのご意見誠に有難う御座います。
 成る程、全然思慮へ入れていませんでした^^;(駄目じゃん;)確かに年齢によって喋り方も変わってきますしそれは創作中も同じ事ですね、不覚;
 確かに、会話分考えるときも、地の文を書くのと同様に考えていたかもしれません。「この人はこういう時、こういう風に言うだろう」とは考えますが、「喋り方」については思慮に入っていなかったように思います。
 それと推敲作業を行っていながら、この始末; 恥ずかしい限りです^^: 集中力の無さを露見してしまいましたね; その最たるものが「イサオ」か無念なり^^;
 学習能力も、集中力も無い男ですが(救い様がねえな:)次回からも何か気付いた点がございましたらご指摘、ご意見宜しくお願いいたします。

 長々と拙文での返答。ご両名様申し訳ありませんでした^^;
点数:0 点
投稿日時:2007-07-23 02:52:34
[003] ウルミアさんが好きです。
投稿者:Bandit(目録) 投稿数:137
あとローラさんの怪しげな所も好きです。
軍隊チックな人々のくだりも目新しくてなかなかでしたが、個人的にはミルドリオン公とクレイオールの対決が謎めいていて面白かった。
そしてプリッシュたんにはもっと派手に暴れて頂きたい(笑)。

さて、今回ふと思ったのは、JRさんが多用される「〜へ」という言い回しについてなのですが。
これは、人物によっては会話文中には使われないものではないかなと思いました。
まぁ具体的には、プリッシュが「皆へ希望を与えている」と言っていた所は、やや子供っぽい彼女なら恐らく「皆に」という感じに言うのではないかなと思っただけでありまして。
JRさんは地の文がやや特徴的なだけに、会話文とのギャップというか差のつけ方には苦労されているかもしれないなと思いました。

そしてこれは更にいらん重箱の隅でありますが、文章に手を加えられた時の名残と思われる、同じ文字が重なっている所が数カ所見られました。
あと「ゴリアードイサオ」は「サイオ」ですから! 残念!(笑)

しかし全体的には、場面が多い中にもテンポがあり、とてもよい感じに仕上がっているのではないかと思いました。
次回は「よろしく」との事、そちらも楽しみにお待ちしております。
点数:8 点
投稿日時:2007-07-22 16:02:30
[002] 鬨を挙げぇぇぇい!!!
投稿者:さそ(下級職人) 投稿数:50
わーい!ジャスジャスぅー!!(第一声がそれか)

ここのところ個人的に“軍人さん”という要素にハマっておりまして、今回はとりわけ食い入って読ませて頂きました。フランクランとチェルが好きですねえ。やっぱ軍人さんに軽口トークは必須です(勝手な解釈)。
また、ジェニー帰投後のややカジュアルな騎士団会議、そこで交わされる様々な情感入り交じる会話、即席のささやかな祭壇等々、虚脱と安堵がない交ぜになった“酷い負け戦の後の空気感”が臨場感たっぷりに伝わってきて、まさにお見事。JRさんの緻密で丁寧な描写の真骨頂だと、生意気ながらに唸ってしまう次第です。

あーそれにしてもジャスティニアスは良いですね!プリッシュに対するほどよい距離感と優しい視線。そして蹴り!偏愛しちゃいまry
点数:8 点
投稿日時:2007-07-22 12:40:57
[001] 作者の懺悔(あとがき)。
投稿者:JR(名取) 投稿数:96
タブナジア祭りじゃぁぁぁ!!!

 長ッ! そして遅ッ!!(開口一番それかよ;)
 主人公が不在になり、この少女の下りは当然主人公だろうと思い、今作に臨んだわけですが、まあ、場面が展開する。展開する。見知った顔がずらずらと。見知らぬ顔もずらずらと。前置き無しに出て来て、いきなり姿を消しているオリジナルキャラクターも数名。で、主人公一体誰ね? ――すいません。作者でもはっきりとこいつとは断定出来ない所存であります(お仕置決定)
 今回タブナジアを一時ながらも舞台にするということ。それと『ほんの小さな物語』の虚ろのエルヴァーン族のお兄さんの過去を振り返る際に「虚ろなる闇」について触れておきたいなということ。以上二点を踏まえて某用語辞典のサイトで、この二点に関係しそうなこと(主にネタバレという非道ぶり)を調べていましたらどっぷり俗称されるPMにはまってしまいまして。こりゃもう拝借するしかあるめえよと、物語に挿入していくしかあるめえよと意気込んでいたらこの様で御座います。この少女編の尺が云倍に跳ね上がる悪い予感だけが脳内を過ぎるのであります――;;(末期症状;)
 それでも上記の理由も御座いまして、大分楽しく書かせて頂けました^^; この先ずっとこんな自己満足な作品が続くものだとおもわれます;(傍迷惑)
 それと9.99割方フィクションですが、故に中途半端なネタバレ(?)が、この先幾つか出てくるかもしれません; 自身のひんまげられた史実の物語の中に、上手く(都合よく?)、実際の設定等を織り込むことが出来て、一つの物語として成立させる事が出来ていたら、これ幸いです^^
 と、上記でほざきつつ、既にその設定を持て余しております; プリッシュのキャラクター違うから; もっと快男児なキャラクターだから(おい;) 最後のオチはそういった悶々とした云々より作者の気持ちを晴らしてもらうための一撃です(ダメな大人め;)ジャスティニアス南無(こら;)
 と、このように(どのように)作者の想定を大幅に逸脱していった今編ですが、皆様にご満足頂けるような作品に仕上げていく事が出来たら非常に幸いです。誤字脱字、句読点の位置、表現方法、構成の仕方。些細な点から明確なものまでご指摘、ご意見頂けますと今後の作品の励みになるので非常に嬉しいです。宜しくお願いいたします^^(ああ、読者様方がどんどん引いていく;)

 次回は、よろしくの続きを創作したいと思います^^ 長々と長文失礼致しました。最後まで読んでくださった皆様方、誠に有難う御座いました^^
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投稿日時:2007-07-22 03:58:27
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