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想い 4
投稿者:アカツキ(徒弟) 投稿数:26
ジャンル:シリアス
点数:6 点
「ここの風車は他のよりも少し小さいみたい。造った人はちっさいのが好きだったのかなー」
「あ、見てパンちゃん。お花が咲いてるよ。蝶々も。可愛いね」
「……メルヘンだねえ、あんたは。しかし、なんだってこんな場所に建ってんのかねえ。上の方が風通し良いんじゃないかい?」
「でも、風はちゃんと吹いてるみたい。気流の関係かしらね、上よりもここの方が風の通りがいいのかもしれないわ。──それにしても、なんだか他の風車より可愛らしい感じがするわね。やっぱりおちびちゃんの言うみたいに、小さいからかしら」
「ぶー。おちびちゃんってひどいなあ。でもでも、ちっさいから可愛いってことは、アタシも可愛いってことだよねー? えへー」
 坂を降りた俺は思わず顔をしかめそうになった。皆好き勝手に話すものだから随分と騒がしい。赤魔道士と黒魔道士は既に風車を調べているが、ブルームは花に夢中だし、パンは「いい素材使ってるねえ」とか言いながら風車をぺしぺし叩いている。「わかるのかよ」とツッコミを入れそうになったが、十中八九適当に言っただけだろうからやめておいた。
 ふと、俺と同じように少し離れたところにいた暗黒騎士と目が合った。少し機嫌が悪そうだ。「なんとかしろ」と目が訴えていた。
「おい、パン。目的のものはどうなったんだよ」
「……っと、そうだね。いや、ちゃんと覚えてるから安心しなさい」
 ──パンが一瞬、本当に忘れていたような呆けた顔をしたように見えたが気のせいだろうか。
「たしかどこかに埋まってるって話なんだけど、目印はこの風車くらいだからねえ。──よし、みんなで手分けして掘るよ。手当たり次第に探すしかないみたいだから。日が暮れるまでには帰らないと契約違反になるからね。もしそんなことになったら、フェルに何要求されるかわかったもんじゃないからねえ」
 彼女は『半日もあれば終わる』と言ったことを覚えていたらしい。
 別に少しくらい時間がかかろうが構わないが、早く終わらせる方がいいことに異存はない。俺も鞄から道具を取り出して作業に取りかかろうとしたが、その前にまず風車を観察してみた。これ自体には特におかしい点はないようだ。さっき赤魔道士が言っていたように少し小さいようだが、材質も老朽具合も他のそれと変わらない。ブロック型の石を積み上げた風車には、苔が生えていたりブロックの角が欠けている部分はあるが、造りはしっかりしている。
 俺の後ろで、パンが肩をぐるんぐるん回しながら「よしっ」と気合いを入れていた。風車ごと解体してしまいそうな勢いだ。
「頑張るよ、みんな。ほら、ブルーム。あんたもいつまでも花と戯(たわむ)れてないで手伝いな」
「……ねえ、パンちゃん。これ何かな」
 膝に手を当ててかがみ込んでいたブルームが、自分の目の前を指さしていた。風車の陰に何かを見つけたらしい。
「どうした」
 ブルームの頭の上から、彼女が指さした辺りを覗き込んだ。その時、一頭の蝶がひらりと飛び去って俺の目の前をかすめていった。思わず視線を奪われる。はたはたと舞う蝶を眼で追ううち、先ほど西の方にあった雲がすでに俺たちの頭上にまでかかり、陽の光を隠して辺りに仄暗い影を落としていることに気づいた。これは本当に雨になりそうだ。
「なんだこりゃ」
 パンの声で我に返った。皆一様にブルームの示した場所を覗き込んでいたので、慌てて俺もそれに交ざる。
 風車の脇には灌木(かんぼく)があり、それに黄色い花がいくつも咲いていた。ブルームは最初これを見ていたのだろう。
 この花は知っている。たしかエニシダとかいう名前だ。この花は蜂などが花に止まるとその重みで花弁が開き、雄しべが蜂に巻き付いて蜂を花粉まみれにして雌しべに受粉するという巧妙な仕掛けを持っているらしく、その仕組みを研究したいという学者にサンプルの収集を頼まれたことがあった。魔女の箒(ほうき)はこの花の枝を束ねて作ったものだという伝承もあるらしい。
 だが、それ自体はどこにでもあるただの花に過ぎない。俺たちが見ているのは、その脇の、何の変哲もないはずだった地面だ。だが、そこは今、黄色く淡く輝いている。地中にある何かが発光していて、その光が漏れ出ているようだった。
「ブルーム。なんであんた今までこれに気づかなかったんだい?」
「違うの。突然光り出したんだよ」
「突然? ……怪しいわね。突然の変化が起きたときはいつも、何かが起こる前兆だもの」
 黒魔道士が訝しむような目つきで発光体を見ている。
「何があるにせよ、掘ってみればわかることだ。どのみちこれ以外に手がかりはないのだろう」
 暗黒騎士の的確な意見に、パンが「そうだね、その通りだ」と相槌を打った。
「たしかにごちゃごちゃ言っててもしょうがないや。よし、掘ろう。フェル、出番だよ」
「俺ですか」
「当たり前だろう。力仕事は男の役目、ってね」
「……まあいいよ。じゃあみんなは万一に備えて周りを警戒しててくれ」
 光が漏れているということはそれほど深く埋まっているわけではないだろうが、とりあえず道具を使って掘ることにした。
 それは、淡く光り輝いているということ以外はコンシュタットにあるどこの地面とも変わりがない、紛れもない大地だった。一番強く輝いて見える場所を指で軽く触れてみた。やはり、固い。乾燥しているせいだろう。
 作業を続ける。さらに数センチほど土を掻き出したとき、道具の先が土以外の何かに触れたのに気がついた。小さな鎖のようなものが見えていた。傷をつけてはいけないので、ここからは手作業で土を掻き出していく。
 そうして姿を現したその正体は、輝く金色の鈴だった。黄金でさえこれほど輝くことはないだろうというような眩さだ。ましてこれは、土の中に埋まっていたのだ。そう考えると、何か薄ら寒いものを背中に感じた。
「お、出てきたみたいだね。すごい価値がありそうだねえ。もっとよく見せてよ」
 いつの間にか横にいたパンが鈴を俺から引ったくった。ちりりん、とパンの手の中で鈴が威勢の良い音を立てた。透明感のある、よく澄んだ音だった。
 その一瞬で、俺は総毛立った。全身をスライム族に包まれたような違和感が襲った。
 突如彼女の手の中にある鈴は強く明滅しだし、最後に一際強い光を放つとそのまま輝きを失ってしまった。
「え、え?」
 輝きを失った鈴は、風に吹かれると灰のようにぼろりと崩れて跡形もなくなった。
「うそっ。なんで!? あたしゃ何もしてないよ」
 狼狽するパンの声。だが、俺は既に場に起こった変化に気づいていた。今はそれどころではない。抜刀して、後ろの坂の上を睨みつけた。
「こ、今度はどうしたんですか」
 俺の行動の意図が見えないらしい、ブルームが不安げな声で尋ねてきた。赤魔道士もぽかんとしているようだ。
 暗黒騎士と黒魔道士は、異変に気づいたらしい。
「パン。逃げるぞ。テレポだ。コンシュタット以外の場所ならどこでもいい」
「へ? もう、さっきからなんだってんだい。一体どうしたってのさ」
「敵だ」
 暗黒騎士が端的に言った。大鎌を構える。
「あれを見て」
 黒魔道士がつけ加える。汗が、彼女のほんのり紅い頬に一筋の跡をつけていた。彼女はすらりと長い美しい指で、まっすぐ坂の上を指した。状況が掴めていない三人はそちらに目を向ける。
 そして、そのまま凍りついたように動きを止めた。
 空と大地の境界に、でこぼこした醜いラインができあがっていた。先ほどまでのなだらかな丘は姿を消している。まるでかじりかけのチーズのようだ。だが、地形が変わったわけではない。
 それは、辺りを埋め尽くすほどのゴブリンの大群が作ったシルエットだった。連中が動くのと連動して、輪郭がミミズのように蠕動(ぜんどう)して見える。虫酸が走るような光景だ。
「な、にこれ……! どうなってるの!? フェル!」
「俺にだってわからないよ! 考えるのは後だ。テレポだって言っただろう、急げ!」
「わ、わかった」
 こんなのとまともにやりあっていられない。目的は達成できたのかうやむやの状態だが、今は逃げるのが先決だ。逃げると言っても、すり鉢型の窪地の中心にいる自分たちを、ゴブリンの群れがぐるりと取り囲んでいるのだから、地続きの退路などない。他者をホームポイントに帰還させる【デジョンII】では時間がかかるし、パンのテレポだけが頼みだ。
 連中は普段からコンシュタットにいるゴブリンたちと強さは変わらなさそうだが、数がまともじゃない。最低でも100はいる。それでもまだ続々と坂の向こうから姿を現し続けている。いったいどれだけいるというのだ。
 パンが詠唱を始めた。テレポの詠唱には時間がかかるが、敵とはまだ距離がある。このままいけば間に合いそうだ。俺は青い顔をして座り込んでいたブルームを助け起こした。二人のエルヴァーンは敵を見据えたまま、パンの方へとわずかに下がった。赤魔道士がパンの代わりにパーティに防御魔法【プロテア】と【シェルラ】をかけた。万一のためだろうが、そんなことは起きて欲しくないと願った。
 しかし、願いは届かなかった。
 呪文を詠唱するパンの身体に何かが降り注いだ。それは彼女の身体に侵入を試みたが、叶わずに白く弾けて消える。彼女は詠唱を続けながらも、自身に起きた異変に目を見張った。
「パンちゃん!?」
 ブルームのヒステリックな声が響く。
 今の現象は、冒険者ならばよく見かける。“レジスト”だ。相手の魔法抵抗力が強いと、魔法が効きづらくなり通常の効力を発揮しないことがある。
 今のはゴブリンが魔法で攻撃してきたのだ。やはり連中はそれほど強くないようだが、一体何の魔法を唱えてきたのか。そして、魔法の届く射程範囲にまでいつの間に近づいてきたのだろう。
 パンの周囲がまた白く光った。しかし、レジスト。今度ははっきりと見てとれた。【サイレス】だ。沈黙させて詠唱させない気か。
 “すり鉢”の右側に目をやると、ゴブリンの魔道士の姿が二体、見えた。倒してしまおうかと考えたが、パンの詠唱もじき終わる。今魔法の範囲から出てしまうと取り残されてしまう。放っておくしかない。
 ──その『放っておく』ということに、俺は何か嫌なものを感じた。自分の考えたことだというのに。
「サラセニア」
 不安は排除した方がいい。魔法で始末してもらうため、俺は黒魔道士の名前を呼んだ。彼女が振り向く。
 同時に、またサイレスがパンの身を襲った。パンはこれも問題なくレジストした。
 だが、俺は見てしまった。魔法が詠唱された時、二体のゴブリンの後ろに、別のもう一体が突如現れたのを。
 最初からいたのを見落としていたのではない。ましてやそいつは後ろから近づいてきたわけでもない。ゴブリンの本隊と魔道士たちとの間はまだ離れていて、奴らがいるのは開けた土地なのだ。接近してきていたとしたら、それを見落とすほうが難しい。
 奴は、突然現れた。まるで最初からそこにいたかのように。
 俺の頭をある考えがよぎる。しかし、『それ』をモンスターが使った事例など聞いたことがない。もしそれが事実だとしたら、恐ろしいことになる。
「ロイ。今、あそこのゴブリンが突然現れなかった?」
 サラセニアも同じものを見たようだ。俺の気のせいではない。俺の危惧が現実のものである可能性が一層増した。心臓の鼓動が早くなるのを感じる。
「サラセニア、あの連中を範囲魔法で片づけてくれ」
「え? でも、もうすぐテレポが──」
「説明は後だ。早く」
 彼女はそれ以上は何も聞かずに、俺の眼を見ながら「わかった」と言うと、そのまま詠唱を始めた。
 だが、サラセニアの詠唱が始まってすぐ、『見えている』ゴブリン魔道士たちの周りで複数の魔法詠唱の気配を感じた。俺の考えがいよいよ当たってしまった。これは、やはり。
「気をつけろ! あいつら、【インビジ】を使ってる!」
「えっ。まさか。モンスターが知覚遮断を? そんなの聞いたことな──」
「まずい、また魔法がくるぞ!」
 赤魔道士の言葉を遮って俺が叫んだ時、サラセニアの詠唱が完了した。
 【サンダガ】が奴らの上空で炸裂する。雷(いかずち)が空を裂く。落雷を受けたゴブリンたちは、その身体から黒煙を上げながら次々と倒れ伏した。地面に転がっている奴らの数は、見えていた数よりもかなり増えている。20は下らない。
 サラセニアのサンダガ発動とほぼ同時に、パンに多数のサイレスが襲いかかった。サラセニアの魔法は間に合わなかったのだ。
 パンは降り注ぐサイレスをレジストしながら懸命に詠唱を続けたが、遂にレジストしきれなかったひとつのサイレスが彼女の身体に侵入してしまった。詠唱が強制的に中断される。無理な詠唱中断の反動だろう、パンは膝をついて咳き込んでいた。慌ててブルームが駆け寄っている。
 俺は思わず地面を蹴りつけていた。してやられた。あと数秒で俺たちは逃げることができたのに、またふりだしに戻ってしまった。いや、最初よりも状況は悪い。
 ──モンスターが知覚遮断を使うなんて聞いたことがない!
「言っても仕方がないだろう。嘆く暇があるのなら、今はできることをしろ」
 歯噛みしていた俺を、暗黒騎士が横目でじとと睨んでいた。俺と目が合うとすぐに顔をそむけて左翼の敵へ身体を向けたが、その冷たい態度が逆に俺を奮い立たせた。俺は剣の柄を握り直した。
 ──そうだ、頭を切り換えろ。
 パンにはサイレスを治癒してからもう一度テレポの詠唱をしてもらおう。だが、接近しているゴブリンたちとの衝突を免れることはできそうにない。詠唱が完成するまでの間、俺たちが前線を守るしかない。
 パンは既に次の行動に移っていた。鞄から、沈黙状態を解除する“やまびこ薬”を取り出して飲んでいる。俺が見ていることに気づくと、親指を立ててにやりと笑みを浮かべた。こんな時でも彼女は心を失ってはいない。勇気をもらった気がする。
 だからだろうか。俺がその気配を感じ取ったのは。
 暗黒騎士の脇をかすめながら、俺は走った。一息に間合いを詰めると、俺は何もない空間へと思いきり盾を叩きつけた。
 何かにぶつかった。かちあげられたそれはうっすらと姿を現してきたが、その時には右手の剣がそのゴブリンの胸を貫いていた。
 深々と刺さった剣をすぐさま引き抜くと、息絶えたゴブリンが地に落ちるより先に、そのまま大きく右から左に薙いだ。流れる切っ先の跡にそって鮮血が噴き出す。徐々に姿を露わにしながらばたりと倒れ伏す敵の姿。
 ゴブリンの奇襲隊、第二陣だ。
 俺が斬ったゴブリンたちは再度の奇襲攻撃を遂行する前に息絶えた。──だが。
「くそっ、数が……!」
 多い。まだかなり残っている。姿の見えない敵に対し、もう一度剣を振り下ろした時、彼らの魔法が一斉に発動した。
「ああっ!」
 後ろからパンの声が聞こえる。また魔法の集中攻撃か。しかし振り向く暇はない。目の前では魔法詠唱と同時にゴブリンが次々と姿を現している。今は少しでも数を減らすことに専念した。
 剣先が上から下へ流れ、敵の頭を割る。返す刀で相手の右脇腹から切り上げると、踏み込んだ右足を引きながら同時に腕と剣を身体に引きつけ、すかさず身体を反転させながらもう一度踏み込み、剣を突き出した。
 敵を次々と仕留める。しかし多くは紙一重で詠唱が完成し、魔法が発動してしまう。
 暗黒騎士の加勢もあり、殲滅するのに時間はかからなかった。俺が右下から切り上げた敵が倒れると、それきり攻撃はやんだ。今ので最後のようだ。
 ゴブリンの攻撃を阻止することはほぼ叶わなかった。発動した魔法はそのままパンを攻撃してしまった。
 何の魔法かは既にわかっている。
 【アスピル】だ。対象の魔力を自分のものにしてしまう魔法。この魔法は、レジストできても少量ずつ魔力を奪われてしまう。あの数から言って、パンの魔力はもういかほども残ってはいないだろう。俺たちは退路を断たれてしまった。見ると、やはりパンはブルームに肩を借りながらつらそうな顔をしている。
 生命力を吸い出し己のものとする【ドレイン】とは違い、アスピルで命を奪われることはないが、魔力を失った魔道士は裸も同然だ。魔法を使えない非力な魔道士は、仲間に頼ることでしか自身の身を護る術はない。
 魔道士隊の攻撃が終わったからか、中央に陣取っていた連中の進軍速度がにわかに上がりだした。衝突まであと30秒といったところだろう。
 逃げ道はない。敵は無数。更に包囲を受けているとくれば、後は蹂躙されるのを待つだけだ。
 一般の話で言えば、だが。
 辺りに耳障りで甲高い音が響いた。
 赤魔道士がホイッスルを吹いていた。三国から冒険者に支給されるもので、パーティメンバーに注意を促すときなどに使われる“コールホイッスル”だ。
「諦めるのは、まだ早いよね〜」
 これまでと変わらない、やや語尾の流れる気の抜けたような口調だった。彼女の言葉はパーティを鼓舞するようにも、自分自身に向けられたもののようにも感じられた。
 赤魔道士は敵に向き直ると細剣を抜刀した。魔法を詠唱し、剣に属性を付与させている。
「パンちゃん、ごめんね〜。【リフレシュ】があればよかったんだけど、アタシまだ未熟だからさ。もう少し経験積めば使えるようになると思うんだけど、無い物ねだりをしてもしょうがないよね。今の力で全力を尽くすだけだよね。がんばるよ。アタシにできるのは、それだけだから」
 戦闘準備を整えた彼女は、もはや間近に迫っているゴブリンの大軍を見据えて身構えた。
 黒魔道士がブルームと交代してパンを介抱している。暗黒騎士と俺も少し下がりメンバーとの適度な距離を保った。
 一番狼狽えの激しかったブルームも、覚悟を決めたのか、雰囲気が先ほどまでと違っていた。その眼には決意がみなぎっている。生きるという決意。
 自分の口角が上がっているのに気がついた俺は、慌てて口元を隠した。
「サラセニア」
 敵を見据えながら、黒魔道士に声をかける。
「パンを頼む。休ませてやってくれ」
「まかせて」
「他のメンバーで前線を抑える。後ろには指一本触れさせないから安心していい。だろ?」
 皆が頷いてくれた。
「パンが落ち着いたら、君の魔法で敵の魔道士を狙ってほしい」
「あたしの心配ならいらないよ」
 パンの声が聞こえた。強気に振る舞おうとしているのが声音から感じられたが、やはり魔力を失った彼女はかなり消耗しているのがわかった。
「ケアルもしばらくできない足手まといになっちまって悪いね。休んでなるべく早く復帰するからさ。その間、あの憎たらしい連中をぶっ飛ばしちゃってよ。でも、あたしの分は残しといてね」
 ゴブリンたちとの距離、あと30メートル程度。足を軽く引いて、身体を少し沈めた。
 この状況でも皆を和ませようとすることができるのは、彼女の強さだろう。
「パンの出番はないかもな」
「同感。アタシたちだけで全部終わらせちゃうかもねー。ま、ご老体は無理せずに、後ろで休んでてくださいなー」
「誰がご老体だよ!」
 赤魔道士の冗談にパンが怒鳴る。が、本当に怒っているわけではない。
「全く、こんな時までほんと、頼もしい連中だよ。言われたとおり、おいぼれは後ろで休んでますさ。ここは任せるよ」
 少しいじけた口調のパンだったが、少し間を置いて発した次の言葉は真剣そのものだった。
「任せるからさ。あんたたち、死んじゃだめだよ」
 俺たちと敵の間、およそ15メートル。射程距離に入った。
「安心しろ。誰も死なせやしない」
 俺は走り出した。
 戦争が始まった。
投稿日時:2007-04-27 23:25:04
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[003] 遅ればせながら
投稿者:アカツキ(徒弟) 投稿数:26
せっかくご感想をいただいたのに、返信が遅くなり申し訳ないです。

ありがとうございます。JRさんの感想を見て「ああ、今回のはこういうものだったのか」と再確認しております(笑)
感想がなかなか書けないのですよね。「おもしろい」とか「つまらない」とか誰でも書けることしか浮かんでこない(; ̄ー ̄A アセアセ・・・
でも、感想を書くというのも文章力を鍛える訓練になりますから、頑張ります。少なくとも自分の作品に感想をつけて下さった方が投稿されているものには、自分も感想をつけていきたいと思っております。時間はかかるかもしれませんがよろしくお願いしますm(__)m
点数:0 点
投稿日時:2007-05-23 02:29:07
[002] 感想記事の投稿失礼致します。
投稿者:JR(名取) 投稿数:96
冒頭のほのぼのとした展開から一転、一人称と速い展開で緊張感を上手に表現できていたと思います。
突如来襲した100を超えるゴブリン。それにインビジを使用する魔法使いタイプのゴブリンに、消えてしまった鈴。物語へ謎が絡んできてストーリーとしての見所も増えてきて楽しみです。
さて、ロイサンたちの運命や如何に;; 次回からの物語の展開も楽しみに待ち焦がれております!!
点数:6 点
投稿日時:2007-05-04 14:54:45
[001] こんにちは
投稿者:アカツキ(徒弟) 投稿数:26
久しぶりの続編でございます。

前にアップした時は、「執筆速度を上げる」とか言ってましたが、逆にそれ以上の時間がかかってしまいましたね(; ̄ー ̄A アセアセ・・・
まー、執筆の進まないこと(苦笑)プロットは作ってあるけど、肝心の文章が思い浮かばない。話の筋を通そうとすると文章が不自然になる。ひどいもんでした。この作品に関しては一度封印しようか、と考えたくらいです。しかし、中途半端なまま別の作品を書くのは気持ちが悪い。ただでさえすでに足かけ三年この作品を放t……もとい、作り続けているので。
というわけで、今回のアップしたものはそのころに一日1行とかずつ進めたものです。あまり推敲・書き直しはせずにあげました。だって、直そうと思うと全部変わっちゃいそうでキリがない(笑)
なるべく不自然な点はないようにだけは修正したつもりですが、おかしな場所などがあればご指摘いただければ幸いです。物語に対する感想などもお待ちしています。
読んでいただきありがとうございました。
点数:0 点
投稿日時:2007-04-27 23:33:22
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